english

ここから本文エリア

紙面から from Asahi Shimbun

この声の英語ページへ

核なき世界へ 被爆国から2013(5)
 ミュージシャン 後藤正文さん   (2013年2月2日掲載)

写真

 ■優しさで世の中回そう

 《炸裂(さくれつ)/目も眩(くら)む熱さで何もかもみんな吹き飛んだ/深いバケツ/満たす僕の青さをブチまけたみたいな空だ》

 「NO.9」という曲の一節です。広島で感じたことも歌にしています。

 ツアーで行くたび平和記念公園を訪ね、手をあわせるんです。原爆投下は集団虐殺だと思うし、いまだに腹が立つ。海外から招いたミュージシャンを連れて行くとみなへこんでしまう。「ライブどころじゃなくなる」って言うけれど、足を運んでくれてありがたい。

 韓国では戦争の資料館に行きました。日本の加害の展示に肩身が狭い思いをした。韓国料理店で夫婦と話した時、戦争の話になった途端、心のシャッターが下りたようでした。自分の国がした戦争は、まだ終わっていないと感じます。

 僕らの世代は戦争を直接知りません。何のために国同士が戦争し、殺し合うのか。その理由を発見するのは、とても難しい。でもなんでみんな、いつの間にか乗っかっちゃうのか不思議。「なんで戦ってんの」ってだれもが普通に言えるようになればいいと思う。

 僕は世界平和に貢献するために歌ってるわけじゃありません。核兵器をなくすために何をすると聞かれたら途方にくれる。でも、原発で生み出されるプルトニウムは核兵器の材料になる。自分たちがエネルギーを得てきた技術が、少なからず核兵器を担保していることは学んでいい。核兵器を人間に使ったらどれほど悲惨かを味わった国。忘れちゃいけないと思います。

 理想論かもしれないけど、ささやかな優しさを世に投げ出すことから考えてみては。例えば、コンビニエンスストアの店員の愛想がよくなるだけでも街がいい感じになります。お金でなく、優しさが世の中を回すようになれば、核兵器とかいらないでしょ。(聞き手・清宮涼)

****

 ごとう・まさふみ 1976年、静岡県島田市生まれ。ミュージシャン。ロックバンド「アジアン・カンフー・ジェネレーション」のボーカルで、曲も作る。東日本大震災の被災地の状況などを伝えるフリーペーパーも発行。ツイッターのフォロワーは20万人を超える。