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紙面から from Asahi Shimbun

聞きたかったこと

 「聞きたかったこと」は、朝日新聞広島県内版で2008年4月に始まりました。記者が被爆者の人生をたどり、その思いを聞いています。被爆者としての人生を強いられた人の言葉は、「核時代」を生きる私たちの警句でもあります。東日本大震災を経ての思いにも迫ります。原則週1回の掲載で今も続いています。収録にあたって、年齢・肩書は掲載時のままとしました。

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    焼けた父の背中 鮮明に  広中 正樹さん(70)

     焼けただれた父の背中を思い出すたび、言葉に詰まる。「5歳の頃に戻ってしまうんです」。広中正樹さん(70)=福山市=は取材中、しゃくりあげて涙をこぼした。被爆体験を子どもたちに語る時もいつもそうなるという。自作の漫画には、あの夏の記憶が鮮明に描き出されていた。……

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    「一人」何よりつらい  河口 房子さん(97)

     「一人のお婆(ばあ)さんが『助けて―!!』って来たんよね。お乳から骨が見えるほどダラーっと乳がさがっとった。自分も身が全部とれてほおが垂れ下がった。恐ろしくてよう見られんかった」  広島共立病院(広島市安佐南区)がこの夏発刊した被爆体験集「ピカに灼(や)かれて」を読み、河口房子さん(97)=同区=の手記に圧倒された。病院職員に語った惨状が生々しくつづられ、「でも、若い人には言うとかんと、と思って」と締めくくられていた。……

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    弟たちは天国にいる  岡野 道子さん(78)

     「どこから話せばいいのかしら。今まで、誰にも話したことがなかったから」  7月の昼下がり、東京・玉川学園前のカフェで私と向き合った岡野(旧姓・為廣〈ためひろ〉)道子さん(78)=東京都町田市=は戸惑った表情を見せた。  「原爆に遭った体験を聞かせてほしい」とお願いした。「わかりました」。岡野さんは堰(せき)を切ったように語り始めた。「私は弟を見殺しにしたんです。50年以上、ずっと苦しんできました」……

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    たんぽぽ、命の模様  川村 淳子さん(80)

      「『たんぽぽさん』と呼ばれるんよ」  川村(旧姓・堀内)淳子さん(80)=東広島市=の自宅には、染料がにじむのをろうでふさぎながら布に模様を描く「ろうけつ染め」の作品が10点ほど並んでいた。たんぽぽの綿毛を描いたものばかり。理由を尋ねると、「恥ずかしくて誰にも言わないんだけど」とはにかみながら教えてくれた。「弟は、綿毛のように生きたいところで生きているって思うのよ」……