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天野彰のいい家いい家族
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母を失って改めて思う母の居場所

 私ごとで恐縮なのですが、この連休のスタートの朝、長患いだった母が亡くなりました。おかげさまで比較的ひ弱であったのにもかかわらず5人の子を育て、10人の孫そして3人のひ孫を見て、87歳の長寿を全うしました。

 母が幸せであったかどうかは定かではありませんが、事実として今の兄弟そして家族は母のおかげで存在するのです。その子や孫として母や祖母に大いに感謝し、幸せな長寿を願うのですが、今改めて感じる母の長寿がはたして、必ずしもめでたく幸せなことだったとは言い切れないと思う寂しさがあります。

●すべての親兄弟と家族は、母の誕生そして結婚で始まる。そして‥‥

 多くの家族の家づくりのお手伝いをするなかで、現代の住まい、家族はどうあるべきかを学んでいるのですが、わが母を失って改めて現代の長寿社会、そして親兄弟そして家族のあり方と言うものを現実のものとして考えさせられたのです。

 現代の急激に早まった生活のスピードに対して、長寿は確かに長い老後の暮らしの中で多くの楽しみや学習ができて幸せそうなのですが、その半面、若い家族や世代とあまりにもギャップが大きくなり過ぎるという問題があります。それも元気なうちはいいのですが、夫の病そして他界、さらに来るわが身の不自由と患いで、その幸せは急激に変化するのです。

 社会の仕組みは福祉や介護の制度として確かにあるのですが、一方でその子どもたちはその長寿政策のために負担が増し、しかもわが老後不安のために準備もままならず忙しく働かなければなりません。当然のことに親の最後の最後に至っては思うような介護もできず、そして会うことすらままならず寂しい思いをするのです。

 では、と親を引き取り自身で介護でもしようものなら、わが身も高齢でたちまちギブアップ! ここで兄弟でも居ようものならその振り分けも大変で、結果、感情論ともなり、その争いを見る親の気苦労や情けなさがかえって助長されてしまうのです。

 母親の人生は自身の誕生に始まり、愛する夫との結婚、そして多くの子を生み育て、家族を養い、その子を送り出し、さらにその生活や仕事の無事を願い、おまけに孫の面倒まで見て、今度は夫の介護をし、いまわを見届け、そして今、不自由になったわが身の置き場に悩むのです。

 幸いにも近くに住む気丈な末の妹と優しい夫とその母に支えられ、しかも良い病院で介護されていたのですが、かえって母はそれが申し訳なく切なかったようでもあったのです。その反対に、末妹は苦しい中でも働きながら介護のできる職場併用住宅を新築し、その一角に母の部屋をつくり、まさに病院から引き取ろうとしていた矢先のことでした。

 遠くで見守るしかなかった私たち兄弟家族は、ただただ末妹家族に頭を下げるのみなのです。結果、その場所に安置された母は、なんとも言えない嬉しそうな顔でまるで笑っているようでした。

 ここで波乱に満ちた母の生涯は幕を閉じるのですが、最期の居場所を見つけた幸せそうな母の表情に救われ、残された5人の兄弟、そしてその家族はまたその平和を取り戻したようでした。

妹の家。右奥の赤いベッドが見えるのが母の寝室、左は浴室・事務室。設計は著者
(2004/05/03)


(天野さんへのご質問、ご意見はinfo@amanoakira.comへ)




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