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夫婦のそれぞれ寝室、ときに分離ときに一体 |
前回夫婦の寝室のあり方をお話ししましたが、夫婦は一つではないのです。家づくりの現場では、夫婦や家族を一つにまとめて間取りや家の形を決めてはいけないのです。確かに家族が仲良く住める家は、まず夫婦が円満でなければなりません。それが理想ですが、「家族は一つ、夫婦も一つ」などと言った幻想を抱いていると、すべての間違いのもととなるのです。
今、住まいの中で一番不安なのは同居などの親子関係でもなく、子育てでもなく、「夫婦」なのです。夫婦には親兄弟とは違って確かな絆(きずな)があるわけでもなく、しょせんは赤の他人の組み合わせなのです。と改めて言うと、冷たく大げさに聞こえますが、実際に住まいづくりのお手伝いをする設計者の私自身、この夫婦に大いに惑わされ、裏切られることが多いのです。
現代の家族は決して一つではありません。そこでその家族を“分解”して「夫婦」「子ども」、そして「親夫婦」と分けてプランニングをします。実は、これも間違いの始まりなのです。
エーッ?と思われるかもしれませんが、まず「夫婦」は夫と妻それぞれで、一つではないのです。もちろん子どもも男の子か女の子、あるいは長女、次女さらに性格も別々でバラバラです。親夫婦も同じことで、それも夫の親、妻の親ではこれまたまったく違うのです。
そう、家族は「それぞれ」でそれぞれの意見や要望があるのです。「妻の言う通りにしてやってください」とか「あなたが決めて」などは要注意で、あとでやり直しをしたり、夫婦げんかの元になったりします。そんなとき、私は夫婦別々に会って意見の調整するのです。そうです。家づくりで一番大切なことは、「夫婦それぞれの本音」なのです。親子同居の時には親夫婦、子夫婦それぞれ4人の意見聴取が必要となるのです。
よくあることですが、どの夫婦も「子ども、子ども」と子どものことが最優先となり、まるで子どものために家を建てているかのようなのですが、そんな家に限って夫婦の寝室よりも広い“快適な子ども部屋”を与えてしまい、結局は「オレの部屋」となってしまい、親子の断絶の原因となりかねません。家づくりを通じて子どもたちに家の意味を学ばせ、親たちの威厳を教える絶好のチャンスを失っているのです。
男の子が1人いるお母さんは、一人っ子の彼を個室に閉じ込めることに反対し、親の寝室の前室、いわば大きな納戸のようなスペースを遊び場兼寝場所とし、彼が成長してからやっと子ども部屋に区画をして、残りを家族全員のパソコンスペースとされたのです。
それに対して「夫婦の寝室」は広々と取り、一つの部屋ながら互いの好みに合わせ、一方は和室で布団、もう一方は洋間でベッドを置き、双方の間にふすまを立てれば別々に休め、互いのいびきや歯ぎしり、さらには就寝時間の“時差”とクーラー戦争となりかねない“温度差”を調整し、時にはふすまが開いて“一体”となり、夫婦円満となるのです。(前回イラスト参照)
「家」はもともと「戸」で囲まれた「寝る戸」で、「寝戸」すなわち「いへ」です。そう! 住まいの原点は「夫婦の寝場所」なのです。そこで夫婦を中心とした家族が安心して平和に休め、子どもたちはその親の生活のもとで成長していくのです。