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がむしゃら家づくり(3)コンクリートの家?

2006年11月12日

 建てる家を鉄筋コンクリートの構造に選択したとき、家内は当然のことに反対しました。木造に比べ高いと思っていたからです。もちろん鉄筋コンクリートで木造の家ほどの仕上げにすれば、どれほど材質を落としても高くなります。しかし私が狙ったのはコンクリートのままの“やりっ放し”で、間仕切りも作らずとりあえず床だけは板を張って住もうと考えていたのです。

イラスト

最初はローコスト「体育館住宅」

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大工さんが組んだ丸太の足場

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やっと完成した漆喰の壁と板張りの天井の居間

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二階への漆喰のトンネルの階段

 まさしく私の提案する「体育館住宅」で、これは木造でも同じことが言えます。家の中にバストイレとキッチンだけの水回りをとりあえずつくり、あとは間仕切りなしのワンルームにすればかなりローコストにできます。しかし私は狭い敷地の高度利用と家の中に柱がない“大?空間”ができるコンクリートのラーメン(はしらはり)構造にしたのです。

 たまたま敷地が道路より高かったため、法的に地下扱いにし、そこを駐車場にしました。したがって玄関は道路から見ると2階に相当するところにあり、そこがダイニングリビングでさらにその上が寝室群のフロアとなり、その上を洗濯物干しの屋上にしたのです。

 あとは徹底的なローコスト策を講じ、まさかの最近の耐震構造偽装のように鉄筋を抜くのではなく、コンクリートを流し込むベニヤ板の仮枠を何度も使うようにしたり、足場も写真のように大工さんに丸太を組んでたてたり、給排水の配管も家の外にはわしたりしました。窓のサッシはビル用の汎用品を用い、だいたい狙い通りのコストで躯体(くたい)ができあがりました。こんなことは自分の家だからできたことですが、どなたもこのような覚悟をしていただければできるはずなのです。

 躯体さえできればこちらのもので、お陰でマンションが早々に売れ、明け渡して未完の家に引っ越しもできました。が、それからが大変。コンクリートの生乾きの中でしかも毎日が工事中です。1階のリビングだけ床ができそこをタンスで間仕切りをして寝ました。朝起きるとほこりで髪や眉やひげが真っ白。家内と顔を見合って噴き出したほどです。それこそのども皮膚もからからで、今思えば子どもたちがどうだったかぎょっとします。

 10月に引っ越しして、そんな生活が2カ月も続き、さらにどんどん寒くなって、断熱材は打ち込んであるもののコンクリートの底冷えはすさまじく、近所の銭湯で温まって家族4人がふとんをかぶって寝るという毎日でした。衣服にも身体にもコンクリートのにおいが染み付き、外に出ると自分でもはっと気が付くほどでした。そのとき改めてコンクリートの家は身体によくないと夫婦ともども体感し、実感したものです。

 その後も家族がしょっちゅう風邪を引き、長男のアレルギーもひどくなり、結局何年もしないうちに更なる借金をして打ちっ放しのコンクリート面に漆喰(しっくい)壁をつくって、そのにおいと底冷えから救われたのです。まさに家の中に空気層をつくり、もう一つ木造の壁をつくる羽目となったのです。

 家内をはじめ家族は見る見る生き生きとなった感じがしたのですが……、それまでのコンクリートむき出しが原因だったか、その因果関係は分かりませんが、そのかいもなく家内はその後がんを発病し、数年かけてやっと完成したお気に入りの家に7年住んだだけで入院生活の末、亡くなりました。今でも家内が「コンクリートくさい」「セメントくさい」と言っていたことが私の耳から離れません。

 以来、私は珪藻土(けいそうど)や無垢(むく)の材料をつかい、さらに接着剤や塗装を極力避け、自然素材を多用した健康住宅づくりに傾倒するようになり、私の依頼主にもそれをお勧めしているのです。漆喰(しっくい)と木の板を床天井に多用し、最近は何度かご紹介している珪藻土パネル(エコナフィル)や炭のボードなどで建具や天井を張り、室内の調湿にも心がけ、お陰でコンクリートの家でもかなり住みやすくなりました。

 こんながむしゃらな私の家づくりがそんな結果を招いたのか、あるいはけがの際の大量の輸血が原因だったのか。闘病生活での病院の実際など、家内は私に命がけで多くの教訓と慎重さを遺(のこ)してくれたような気がします。

天野 彰(あまの・あきら)

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

著書には、新刊『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

天野さんへのご質問、ご意見は、[天野さんのホームページ別ウインドウで開きます]から。

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