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家づくりを建築家に頼むと言うこと(1)

2006年11月26日

 最近、マンションも一戸建ても「デザイナーズマンション」とか「建築家と建てる家」などといった宣伝が多くなりました。いわゆるデザインやインテリアを売り物とした家の販売ということです。

絵

「住改善委員会」のパンフレット(1974年)

写真

モデルルームのわが家(1976年)

 しかしデザインはともかく、建築家自身、業者が家を売るためや、注文をとるための片棒をかつぐとなると問題です。デザインではありませんが、あの記憶に新しい耐震強度偽装事件のように構造の建築士が仕事を取るため、マンション業者や施工者の利益追求の片棒をかつぎ、建築家としてやってはならない、人身を省みない、とんでもない偽装事件を引き起こしているのです。

 特に最近は今までのハウスメーカーや建築業者や工務店とは違った新しいかたちの住宅販売業者がこうした「建築家と建てる家」をテーマに、ショールームやギャラリー、ホームページを開設し、客を集め、そこで設計事務所や工務店を紹介するといったものが多くなっています。

 確かに頑張っている新進の建築家でもなかなか建て主に出会えません。かといって高額な広告を出したり、独自のモデルハウスなどを持ったりすることは到底できません。また建て主側も優秀な建築家に会おうとしてもなかなか簡単には会えません。そこでこうした紹介やあっせんの場は必要なことかも知れません。しかし設計事務所はデザインと図面を描くだけで、施工はできません。家を建てるにはどうしても施工者やハウスメーカーが必要となります。その高額な建築工事費をどう取り扱うかが問題となるのです。

 結局のところ、その決定工事費から高額な広告代やギャラリー代、さらには維持管理費その他の引当金などの営業費を支出することになります。もちろん建築家はその工事費はもとより営業費を拒んだり、値引きさせたりすることもできません。結果的に建築家が、デザインや素敵な空間づくりを求めて来た建て主の工事の注文を取る業者、あるいは施工組織のためのツール(営業の道具)となってしまうのはやむを得ないことなのかも知れません。こうした出会いはともかく、あとはその建築家のセンスと良心に任せるしかないのです。

 こうして設計と施工で同じ高い営業費を支出することになるのなら、なにも回りくどいことをせずに建築家は直接メーカーや企業に属し、あるいは契約をし、そこの契約建築士として設計を業務にする方が職責も施工者の責任もはっきりし、建て主も安心かも知れません。いずれにせよ信頼できるフリーの建築家に出会えれば、その制限の中で一生懸命協力してくれるかも知れません。建てる側もわが生涯を預ける気で必死で建築家を探さなければなりません。

 私ごとですが、若い頃は仕事がなく(今もあまり変わりませんが……)、自身で走り回って営業をしていました。借りたアパートを注文家具でリフォームしたり、次に住んだ住みにくいマンションを間仕切り収納で改造したり、ついにはなけなしのお金で土地を買いローコストの家を建ててモデルルームやモデルハウスにするなどして頑張ってきましたが、挙げ句の果てにそのさ中に妻を失うなどのつらい思いもしました。

 特にあの銀座の灯も消えるオイルショックの1973年以後の5、6年間はひどいもので、まったく仕事がなくなり、多くの設計事務所や施工者がつぶれました。これは大変と仲間の設計事務所と力を合わせ「日本住改善委員会」なるものを立ち上げ、マンションや古い家に住まいの状況調査のアンケートを配って、建築家の存在や職能をアピールしたものです。

 おかげでその住人たちから共感を得て、多くの改造工事の設計注文を受けたり、その住人の報道関係の人に記事にしてもらったりして、あちこちで講演会や相談会を開くことができました。このように共感を得、そして長続きが出来たのは企業や業者の援助を得ずに手弁当で活動したおかげだと思います。

 その後そのメンバーのエドワード鈴木氏や故真鍋勝利氏を中心に渋谷に「健康住宅」のショールームを立ち上げることになるのですが、そのお話の詳細は次回に譲ることにします。

 「建築家と家を建てる」ことは、多分、ハウスメーカーで家を建てることの2倍、あるいは出来上がった建売住宅を買うことの3倍以上は苦労し、悩むことになるのです。ええッ?? とお思いでしょうが、残念ながら私ほどのベテラン? でさえ、建て主のことを思うとそんな感じがするのです。と、まあ「建築家と家を建てる」のはこれほど間尺に合わないことかと思うことなかれ。その喜びは10倍、その達成感は100倍とも言えるのです。そのお話も次回に。

天野 彰(あまの・あきら)

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

著書には、新刊『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

天野さんへのご質問、ご意見は、[天野さんのホームページ別ウインドウで開きます]から。

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