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家づくりを建築家に頼むと言うこと(2)―自分で家を建てる―

2006年12月03日

 オイルショックのさ中、若い建築家たちが集まって「日本住改善委員会」なるものを立ち上げ、マンションや古い家にお住まいの方々からアンケートを頂きながら、建築家の存在や職能をアピールしてきました。あちこちで安い会場を借りて、皆でお金を出し合い手弁当で講演会や相談会を開きました。

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住まいの健康道場「家ッグ」のパンフレット

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「家ッグ」の内部に卵の家がある

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卵の家の平面図

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卵の家の中のむくの木や和室

 お陰で多くの建て主や住まいの改造(当時はリフォームという言葉もなかった)希望の人にお会いでき、そこでまた多くの実績を生みました。

 次第に報道関係や省庁の専門官、はたまた材料や住宅設備メーカーの人たちからもご賛同を得るようになりました。当時の通産省の産業構造審議会では都市・住宅部会の専門委員として意見を言わせていただき、厚生省の年金福祉検討の委員にもなり、「住まいと文化」そして「住まいと福祉」の双方の確立と要綱づくりに参与しました。さらに住まいと病院の間にあるべき「中間施設」、すなわちのちの「老人保健施設」の魁(さきがけ)をつくるに至り、ついには当時の住まいの「改造」や「改築」と言った「増改築」から今日の「リフォーム」の命名への変遷にも大いに関与することになったのです。

 一方で私的には、なけなしの予算でコンクリートのわが家を建てて、不覚にも妻を喪(うしな)うという辛苦を味わい、「住まいの健康」に重大な関心を持つようになったのです。まさしく当時アメリカで言われていたシックビル・シンドロームをもじって「シックハウス症候群」として、「健康住宅のつくり方」(学陽書房)を出版しました。住改善委員会の主要メンバーとともに「住まいと建築の健康と安全を考える会」などという長ったらしい名前の会を設立しました。そして、サンスター技研など健康材料のメーカーをスポンサーとして、渋谷の目抜きに「住まいの健康道場『家ッグ』」などという、奇怪なショールームを開いたのです。

 『家ッグ』とはまさしく卵の殻の不思議を家にということで、「家」と卵の「エッグ」との合成語です。あの窓も穴もない卵の殻の中で雛(ひな)が呼吸し成長し、孵化(ふか)するという、卵の殻の炭酸カルシウムによる石垣構造の「呼吸する壁」に目を付けました。そのようなコンセプトの「呼吸する家」の実現を想定し、ショールームの真ん中に和紙で出来た段ボールによる巨大な卵の殻をつくり、中に健康材料による木造の家を造るといったものです。

 サンスター技研はセラミックによる呼吸する塗材「セラブレス」(私の命名)を、イナックスは床に素焼きのようなソイルセラミックや抗菌バス、そのほか炭のボードや炭入り畳、さらには抗菌健康キッチンなどを展示しました。メンバーは交代で説明や設計相談を受け付けたりもしたのです。今でこそ「健康住宅」の世の中ですが、当時はまさしく???で、その後ノンホルムアルデヒドなどVOCや、アスベストなどが話題となるのです。

 私自身も、専門家でありながら、実際にわが家を建てることによって、その不健康な施工現場やその後の住環境の実際を生で知り、さらに家をつくること自体の困難と苦難の両苦を身に染みて味わったものです。「困難」と「苦難」は同じようで微妙に違い、困難は何事も大変で、特に資金づくり、さらには夫婦や家族の意見調整や施工の人を選び使うことなどなど……です。苦難はその後の支払いや不都合や不足で、わが家は資金不足のためにコンクリートむき出しにしたためか、結露やにおい、さらに冷えなどで不健康となり、妻が病気になるなど、これはもう苦渋と言うべきです。

 そのおかげで家を建てる人の苦労や不安を自ら学ぶこととなり、その後の設計活動に大いに参考となったのです。今ではその苦難を乗り越えることで、私自身も住まいを建てることの価値や、さらにはその達成感などを大いに味わっているのです。これは家を建て上げた建て主の、ひと周りもふた周りも大きくなられるお人柄や、さらにきずなが深くなったご家族を見るにつけ実感することです。このことが家づくりのお手伝いの、なによりの楽しみです。次回はそんな家づくりの苦労話をいくつか話したいと思います。

    ◇  ◇

 ここで読者の皆様にお知らせですが、実は本コラム9月24日の「消費税上げるなら家と福祉は無税に!」の関連で、来る12月21日(木)午後6時から、東京・霞が関ビルの東海大学校友会館で「住宅の消費税問題を考える」をテーマに話す予定です。

 参加のお問い合わせは主催の「社団法人 住宅生産団体連合会」住宅フォーラム企画グループ事務局(03・3592・6441)にお問い合わせ下さい。

天野 彰(あまの・あきら)

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

著書には、新刊『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

天野さんへのご質問、ご意見は、[天野さんのホームページ別ウインドウで開きます]から。

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