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今年の一文字『命』を守る家を求めて!

2006年12月24日

 毎年恒例の京都清水寺の漢字一文字ですが、森清範貫主は今年『命』の一文字を書かれました。まことにそのとおりの年で、相次ぐ自爆テロや交通事故、さらにはハリケーンや竜巻などの災害、許されない誤作動のエレベーターや改造湯沸かし器、卑劣極まりない耐震構造偽装やリフォーム詐欺、そして何とも悲しい小中学生の自殺や未成年者の殺人事件など、国内外を問わず「命」があまりにも軽々しく無造作に取り扱われた一年でした。

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国宝の舞台を支える壮大な柱梁の懸け造り

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おの催しには東京や大阪からも多くの人が参加した

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清水寺迎賓館で行われた「世界遺産に観る環境と伝統建築の保存」

 その尊い「命」を守る家や家族の重要性を改めて感じ、地震などのあらゆる災害に強い家、VOC(溶剤などの有機化合物)やアスベストなどの危険物質を使わない自然素材の安全な家はもとより、温かい家族をはぐくむ強くやさしい家、「セルフディフェンス・ハウス」(2005年2月13日)の家の実現を本気で考えさせられる時代となりました。そう、構造も内装も念には念を入れた安全の家づくりです。実際、地震も台風もどんなものが来るか、本コラムでも話題に挙げましたが、コンクリートの箱の家や、家電の電磁波などの安全性など、実際には分からないことが多いのも事実です。

 1855(安政2)年10月2日に発生した「安政の大地震」は関東大震災を上回る巨大地震として新たに脚光を浴びています。いわゆる東海地震や南海地震といわれるマグニチュード7を超えるプレート型地震(海溝型・太平洋型)で、その後の文献や地質調査などによって、東海・東南海さらに南海のプレート型大地震が同時、あるいは連鎖して起こった可能性もあることが分かりました。その揺れは関東大震災をはるかにしのぐ想像を絶するような揺れだったとも言われています。

 巨大地震は、来る可能性が大きいと言われています。私たちが住む関東平野はまるで巨大な洗面器の水面のように揺れが増幅され、高層や超高層のビルやアパートは往復2〜3メートル以上も振られる長周期の揺れが想定されるといわれています。さらに台風も、アメリカ南部を襲った猛烈なハリケーンは風速80メートル以上もの暴風が記録されているのです。

 今年『命』の一文字を書かれた森清範貫主とは、一昨年の9月25日に世界文化遺産「古都京都の文化財」登録10周年を記念して、清水寺迎賓室で「世界遺産に観(み)る環境と伝統建築の保存」について大西真興執事長と共にお話をさていただきました。普段は拝観できない清水寺の三重の塔の内部構造など、貴重な文化財の数々も奥深く内観させていただきました。企画はライフ・コーディネーターでテーブル・コーディネーターでもある落合なお子氏によるもので、題して「世界遺産 清水寺・天野塾」でした。

 ちょっと照れるような大げさなタイトルでしたが、こちらも改めて清水寺を学び、発見も多くありました。東山山系の音羽山の急斜面を生かし、春秋の自然と融合しながら多くの建造物を配し、その壮大な景観美を400年にわたって保持していると言う事実です。何度も来た地震や台風から守り、何百年も持たせるためのサステナブル・ストラクチャーであることが分かったのです。

 驚異的なのは、柱梁(はしらはり)の構造はもとより、屋根や床など長年にわたり計画的に補修と部材の交換作業を繰り返していることです。特に足場の悪い、高い急な崖(がけ)に突き出した懸(か)け造り(懸崖造り、舞台造りとも言う)の、国宝でもある「舞台」は、雨ざらしでしかも何万人もの参拝者が今もハイヒールなどで上がる過酷な条件下で、今も“新品”なのです。

 さらにその母屋や舞台を支える構造はわが国「地震文化」の妙があちこちに施されていることが分かります。それこそ木組みの技術で、柔軟で、けっして固定しない仕口(しぐち)によるアローワンスと、筋交いではない貫(ぬき)によるエネルギーの分散。そしてその仕口のすき間に飼ってある楔(くさび)によって衝撃の吸収と構造部材の破壊を防ぐ“すべりの技術”など、対地震の耐震ではなく、地震エネルギーを吸収する「吸震技術」なのです。

 これがまた見た目にも美しく、柱梁の研ぎ澄まされた裸の構造の美であり、世界の建築家をうならせ、近代建築の基本デザインともなっています。中でも超高層ビルの「柔構造」は五重塔や七重の塔の張り出した屋根の重さで、各層をばらばらに組み上げ重ね、その柔軟性で地震エネルギーや風の力を吸収し、減衰させるという、まさしく「柔(やわら)の精神」なのです。清水寺を訪れることがありましたらその景観はもとより、一度舞台の床や床を支える柱梁をじっくりと見てください。(2004年8月16日・同8月25日)

 最近になってサステナブルなどと言われていますが、わが国にはすでにこうした大工などの匠の技をはじめ、建物配置や柔軟な間取り法があり、内装や建具においてもこの「柔(やわら)の精神」でおこなわれ、漆喰(しっくい)や土壁の左官、漆や渋塗り、さらには障子のような指し物(さしもの)の長く持たす技術など、1000年にもわたる素晴らしい建築の文化があるのです。今、その本質的な技術を継承し、そうした家に住もうとする人が少ないことはとても残念なことです。

 そこで、「住まいと建築の健康と安全を考える会」(住健康の会)をさらに再編成し、真に健康で安全な家をつくるため、住まいの専門家集団「健康で安全な住まいを創る会」(健住創)を立ち上げ、メンバーを募っています。この趣旨に賛同され、こうした事例の実績のある方で、われと思わん建築家・工務店、さらには大工・職人の方は大いに参加してください。また関連の医師や弁護士の方々のご参加もおおいに期待しています。お問い合わせ、お申し込みは私のアドレスまたは住改善委員会窓口までどうぞ。

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今年久しぶり飾ったわが家のツリー

 今年も1年が過ぎ去ろうとしています。2001年6月1日、デイリーで始まった「いい家朝日」のコラム『天野彰の元気の出るいい家日記』が3年間で715回続きました。引き続き2004年4月2日にスタートした現在のアサヒ・コム(住まい)の『天野彰のいい家いい家族』が151回となり、通算866回のコラムになるそうです。

 ここまでまいりますとなんか大台まであと一踏ん張りという気分になりますが、ご愛読していただける皆様あってのことです。本当にありがとうございました。今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。

 そして今、しばらく休んでいましたわが家の玄関のモミジに、装い新たにクリスマスのイルミネーションを飾りました。小柄ながら路地を通る人に幸福感を与えると近隣からほめられ悦にいっています。皆さまにとって穏やかな新年を迎えられるようお祈りいたします。

天野 彰(あまの・あきら)

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

著書には、新刊『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

天野さんへのご質問、ご意見は、[天野さんのホームページ別ウインドウで開きます]から。

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