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美しい国は「住育」から まず「子ども部屋」

2007年01月14日

 新年早々のコラムとなります。改めまして本年もまたご愛読のほどよろしくお願いいたします。

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どれがまともに建っているか分からない、阪神淡路大震災

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朝日新聞成人式、黙祷写真

 毎年のことですが、正月の松が取れるころになると阪神・淡路大震災が思い出されます。すでに12年もたちましたが、あの連休明けの、さあこれから今年もと、誰もが思い改まっていた朝の衝撃は生々しく今も忘れることは出来ません。

 当時の1月15日の成人の日の振り替え休日あとの17日午前5時46分、淡路島北部でマグニチュード7.2の地震が発生しました。震源の深さは14キロと浅く、まさしく直下型の大地震です。神戸市、西宮市、芦屋市など人口密集地を震度7の揺れが直撃し直径が3メートルを超える高速道路高架の橋脚が折れ、港湾都市神戸の港は壊滅状態となりました。さらに山陽新幹線、JR在来線、阪神、阪急の鉄道幹線、阪神高速、国道2号、43号の幹線道路は寸断され全面通行禁止となり、日本の大動脈は神戸市を中心に西と東が真二つに分断されたのです。

 市内の惨状はさらにひどく、長田地区で発生した火災などは道路が寸断され、水道が止まって消火活動もままならず、目の前で家の下敷きになった多くの人を炎が襲い亡くしたのです。家を失って避難した人は23万人をゆうに超え、死者はのちに亡くなった人を含めると6400人にも達します。さらに負傷者は約4万2000人、倒壊家屋は約40万棟。被害総額は10兆円以上になりました。さらに東西を分断された日本列島の経済損失がそれに加わるのです。

 12年たった今、この惨劇の教訓が生かされているのは高架陸橋の耐震補強程度の末梢的なこと程度で、実際に起こりうる市民の消火救出活動のための整備、さらにライフラインの“確実な”確保、被災者の精神面までも考慮した避難施設などはなはだ疑問な点も多く、建物の耐震強化に至っては、あれほど多くの耐震構造計算の偽装を見逃すなど、行政サイドの意識の低さは目を覆わんばかりです。

 この直下型の“小規模大地震”は日本のどの町にいつ来てもおかしくなく、さらに関東大震災をしのぐ“大規模巨大地震”などは高層建築では往復3メートルにも達する長周期の揺れさえも想定され、何が起こるかわからないのです。それでも危なそうなところに次々と超高層建築を許可し、そこに住む人の避難救出ソフトは二の次となり、さらに一戸建てに用いられる格安な輸入構造木材の経年耐力低下に至っては、家を持つ人も行政もまったく無関心なのです。

 国民の生活の安全を第一義に考えたら「美しい国」などとは程遠い実情の中で、教育や住生活の法改正などはまさしく美しい国の理想像としてしか思えないのは私だけでしょうか。今こそ、子どもたちに、その教師に、さらには家づくり街づくりをつかさどる大人たち全員に、住まいとはなにか、家族とはなにか、親子で住むとはなにか、それ以前に夫婦とはなにかというような、『住育』の必要性を重く感じるのです。

 この「成人の日」の8日、アサヒ・コムに、神戸市で開かれた「お祝いの会」の記事がありました。

     ◇

 『神戸市兵庫区の神戸ウイングスタジアムで、同市主催の「お祝いの会」が開かれ、市内に住む新成人1万7433人のうち約1万1000人が参加した。95年1月17日の阪神大震災当時、小学2年生だった新成人らは、式典前、6000人以上の犠牲者に対して1分間の黙祷(もくとう)をささげた。

 同市東灘区の大学2年、大西真央さん(20)は、震災でおかゆなどの食料が手に入らなくなり、同居していた寝たきりの曽祖母を亡くした。「地震がなければ……」と悔やみつつ、新成人代表の一人として読み上げた「はたちの誓い」の中で、当時の炊き出しの様子などを思い返しながら、「私たちが今ここにいることは、誰かの支えや優しさなしには実現しなかった」と語った。』

     ◇

 心温まる記事にとても感動しました。東京で、同じ成人を迎えた妹が何よりの家族のはずの兄に殺され切り刻まれると言う痛ましい記事にふさいでいたさ中のことでした。

 家族は夫婦そして親子、兄弟によって成り立っているのです。最近、この当たり前の家族がちょっと変化しているようです。核家族では一人っ子が増えて兄弟が少なく、親子同居では同居と言うより二世帯“別居”生活が定着しています。これは親たちが少子化で少なくなった子どもたちに気づかってのことか、父権の喪失か、あるいは夫婦のあり方のせいかなどいろいろな憶測があるのですが、家づくりにおいて時に目を覆わんばかりの家族の姿を見ることも多いのです。

 家づくりやリフォームでの子どものことはこのコラムでも何度かお話ししました。「子ども部屋」は広く快適にしない。部屋は与えるのではなく、子に“貸す”ということでした。実際に私が提案する家の間取りには「子ども部屋」の記述がないのです。「書斎」か「アトリエ」あるいは「洋室A、洋室B」です。子どもがいてもあえて「子ども部屋」はないのです。「僕の部屋がない」「私の部屋は」と子どもたちはけげんな顔をしますが、私は「うーん、仕方がない。ご主人の“書斎”を息子さんに“貸して”あげますか。奥さんの“アトリエ”をお嬢さんに“貸して”あげて下さい」とご夫妻に“お願い”するのです。

 子どもたちはもとよりご夫妻も目を白黒されますが、やがてなるほどと理解してもらえるのです。この家は親たちのもので、いずれ子どもたちが出て行ったあとは「親のための部屋」だったのです。これで「オレの部屋」にはけっしてならないのです。

 次回は今の子ども部屋のままでも「親子交流の極意?!」をお話しします。

 こうした「住育」の普及とその家の現実化をすすめるため、真に健康で安全な家をつくるため、住まいの専門家集団「住まいの健康と安全を創る会」(住健創)を立ち上げ、メンバーを募っています。この趣旨に賛同され、こうした事例の実績のある建築家・工務店さらには大工・職人方は大いに参加してください。また関連の医師や弁護士、メーカーの方々のご参加もおおいに期待しています。「住育」にかかわる討論会や相談会、さらには発表会などを開催したいと思います。お問い合わせは私のアドレスまたは「日本住改善委員会」の窓口までどうぞ。

 またアサヒ・コム「住まい」のページで「世界のウチ」を長年にわたって担当されている柳沢有紀夫氏(オーストラリア・ブリスベン)をはじめとする世界各国に在住の45名にもおよぶ「海外書き人クラブ」http://www.kaigaikakibito.comの皆様からの海外滞在経験を通しての世界の家族模様や世界の「住育」にかかわるご意見などもぜひご紹介願いたいと思っています。

天野 彰(あまの・あきら)

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

著書には、新刊『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

天野さんへのご質問、ご意見は、[天野さんのホームページ別ウインドウで開きます]から。

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