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「天野彰のいい家いい家族」

温泉施設爆発! 住宅街の事務所の近くで

2007年06月24日

 どーん! さあ、出かけようとしていた矢先の19日午後2時30分ごろ、地響きする大音響にびっくりしました!

写真爆発で壊れた温泉施設の建物=19日午後3時23分、東京都渋谷区松濤1丁目で、本社ヘリから
写真四国脇町の防火壁のうだつ(卯建)がある家
イラスト私が提案するセルフディフェンスの家

 さては突然のカミナリが発生し、近くに落雷でもあったかと窓から空を見上げたのです。別に雷雲の兆しもなく高曇りの昼下がりでした。ともかく打ち合わせに遅れてはならないと車に飛び乗り、走り出したところ、空から真夏の雪かと思える粉じんらしきものが降り始め、さらにプラスチックを焦がしたような、プロパンガスのような、乾いたにおいが当たり一面に立ち込め、目が染み、頭が痛くなってきたのです。

 最近の国内外の情勢から、すわテロかも知れないとの不安もよぎり、すぐさま車の窓と通気口を閉め、事務所にも窓を閉め、換気扇を止めて通気孔を締め、外に出ないように注意したのです。

 事務所から50メートルほど過ぎると、多くの人が事故現場の方に向かって走り出し、行く手をふさがれそうになりました。いつも通る角を曲がると、異臭はさらに強く、道には小石大の破片が散乱し、まだ救急車も来ていない事故現場らしき路地の奥にがれきが崩れ、駆けつける人の間に、誰かが路上に横たわっていることがうかがわれたのです。すでに炎も煙もなく、明らかにボイラーかなにかの大きな爆発であることが分かりました。

 どんどん集まってくる見物人に車を埋められそうになり、自分の車が救急の邪魔になることを避け、路地を急ぎすり抜けたものの、今度は環状6号線(山手通り)への一方通行を逆走して入って来る多くの消防車に道を譲りながらやっとの思いで現場から抜け出たのでした。

 のちにテレビや新聞の空撮写真を見ると、なんと爆発現場は私の事務所から南に200メートルも離れていないところの路地裏奥です。私自身も込み合う道玄坂からの抜け道として、ときどき通る幅4メートルほどの狭い路地に面した建物で、もし通行していたらひとたまりもないところでした。実際に瓦礫の脇に見えたのは、不運にも通りがかりに巻き込まれた人だったのです。

 ひどかったのは四方の医院やビルのガラス窓で、爆風と破片で破られ、中が大変でした。それでもまだ比較的小さい窓ばかりだったため近隣の人的被害は最小限に防げたようですが……、もしも総ガラス張り(カーテンウォールという)のビルであったらと思うとぞっとします。反対に窓のない壁面側は何事もなく、四方をコンクリートなどの壁面に囲まれ、中はソフトな木造の「セルフディフェンスの家づくり」の必要性を改めて感じたものです。

 密集した都市に住むことは今回の天然温泉などといった特殊な例に限らず、このような事故がいつ発生しても不思議ではないのです。現に住宅街にある私の事務所の目と鼻の先で起こるのです。最近は安全管理が向上して少なくはなっているのですが、都市ガスやプロパンの爆発、先日の老朽したガス管による窒息事故など、都市災害はいつ起こるかもしれません。

 都市の密集地を通り抜ける幹線道路や高速道路、鉄道などばかりではありません。大量のガスや石油、さらには化学薬品や放射性物質などの起こりうる事故を想定すると、都市に限らず地方の郊外でも危険は同じなのです。こうした危険と想定される事故を厳しく監視することが第一義ですが、住む方もそれなりの覚悟が必要ということなのでしょうか? 住むのにその快適性を求め、あえて木造で建て、かたや都市でのセルフディフェンスを考えた京の町屋や四国脇町の防火壁の卯建(うだつ)のある家、川越の土蔵づくりなど、都市に住む先人たちの防火・防災姿勢を改めて見直すことも大切です。

 私自身、毎日を安穏と暮らしていて、このような思わぬ事故に遭遇してはじめて大いに自覚させられ、また都市に家を建て、住む責任を改めて呼び起こされた事故でした。同時に不幸にして毎日自爆テロなどに脅かされて生きている人々のことを身にしみて感じた事故でもありました。

 事故に巻き込まれた方々に、心よりご冥福を申し上げお見舞い申し上げます。幸い私の事務所もスタッフも全員無事でした。多くの皆さまのお見舞い、お心遣いを頂きましたことを御礼申し上げます。

 さて次回は「私たちが喪(うしな)ったもの」家の価値とは?についてお話ししたいと思います。

プロフィール

顔写真 天野彰(あまの・あきら)

 岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

 著書には、新刊『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

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