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「天野彰のいい家いい家族」

“古さの味わい”patinaをつくる

2007年08月05日

 わが国の伝統工法による木造建築やヒノキの家の良さについて、どなたも感覚では分かっていながら、いざ家を建てるとなると、なぜか住宅展示場やショールームに足を運び、そこでの出会いからあれよ、あれよという間にまったく違う形の家が建ってしまうことがあるといいます。

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臼杵市の商家、今も味噌醤油を売っている

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三島市の金物屋丸平さん海鼠壁の土蔵

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土蔵の内部、今は喫茶として使われている

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完成したSさんの漆喰壁と軸組みの家

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Sさんの向え庇の軒裏の木組み

 なるほど家はすでにそこまで商品化されているのです。展示してある見本を見て、さらにオプションの品目などである程度の質と価額が分かり、最終的には1個いくらというほどの買い物になるというのです。

 一方、木造建築や、特にヒノキの家となると、はなから高そうで、大工さんや設計事務所を選ぶのがまず難儀と言う話を聞きます。第一、CMも看板も無く、彼らを探すことすらなかなかできません。運よく知人を通じて設計事務所や工務店を知り得ても、今度はその質や出来栄え、さらにはその価額がはっきりとしません。なによりもプラン集やその見本があるわけでもなく、まず白紙の状態からプランニングをし、仕上げ材料や設備も選ばなければなりません。

 しかし、1個いくら感覚で決めた家がほんとうに自分たちに合った家かどうかということです。分譲の建売住宅でも運よくぴったりの家もありますが、ほとんどの場合家族の誰かに不満があったり、いずれ合わなくなったり、不自由になることも多いのです。特にほとんど家にいないご主人が、えいや、で決めた場合は問題が多くなります。

 ここです。家づくりの大切なことは。大工さんを探すことから始めて自分たちでいろいろ決め、苦労して建てることに意味があるのです。手づくりとまでは言わないにせよ、自分たちで材料や色を決め、さらに設計者や大工さんたちと一緒に建てた家は、まず基礎からその構造が分かり、木と木を匠に彫られた仕口で組み上げ、棟上げを一緒に祝い、喜びます。大工や職人さんたちはこの建て主の喜ぶ顔を見て、さらにはりきってくれるのです。こんな家づくりなら確かに愛着が持てます。

 また、木造は軸組工法と言われるとおり、軸、つまり柱によって支えられ、間取りもかなり大雑把で融通もききます。小規模のプラン変更も将来のリフォームも可能です。この軸に本物の木舞壁(こまいかべ:竹などを縄で編んだ木舞の芯に泥と藁(わら)を切り刻んでねって塗る。仕上げに漆喰(しっくい)を塗れば白壁)で仕上げることも可能です。柱梁の軸は白木のまま枯れて行くに任せることもできます。つまり構造から仕上げまでが無垢(むく)で、そのまま枯れて古くなりながらその“古さの味わい”を出して行くのです。室内の木肌も手垢(てあか)や煤(すす)でその味わいを出していきます。まさしく自分自身でつくり上げていくpatinaなのです。

 こうして家にも老ける家と老けない家があります。もちろん時がたてばどんな家でもどんな材料でも古くなります。古くからあるあの漆喰の白壁は、汚れて古くなっても白壁なのです。まさに“腐っても鯛”ではないのですが、数百年たって薄汚れても白壁はその風合いを持っています。要は古くなって味が出るか、古ぼけて汚くなるかです。そう、人と同様、家も“上手に老ける”ことが大切なのです。写真を見てください。上から江戸時代から建っている大分県臼杵市の商家。同じく、静岡県三島市の海鼠壁の土蔵とその内部。今も店舗として、喫茶店として使われています。さらに現代の無垢の柱梁と漆喰壁とその向え庇(ひさし)の家。私自身これから100年後の姿を見られないのが残念です。

 次回は家の中に住む人のpatinaと、最後まで自立できる住まい、セルフサポート自助自立の住まいについてお話ししたいと思います。

プロフィール

顔写真 天野彰(あまの・あきら)

 岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

 著書には、新刊『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

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