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「天野彰のいい家いい家族」

セルフサポート自助自立の住まい(2)

2007年08月19日

 先週は多治見や越谷で観測史上初の40.9度を筆頭に全国各地で40度を超える熱波の日々が続きました。東京でも日中は35度以上で、最低気温も30.5度を記録するなど、熱帯夜が続きました。地震や台風、津波高波、土石流や火砕流の自然災害、さらには火災や犯罪、交通禍と災害災禍はいつやってくるか知れません。この連日の熱波も、私たちの住まいを取り巻く災害のひとつと言えるのです。

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建築リフォーム&リニューアル展でのユニットパフォーマンス

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私の事務所に設置されたユニットとパフォーマンス

 このことが地球温暖化によるとは一概に言えずとも、最近の北極の氷の急激な減少や、わが国の今年の異常に早い台風の上陸、アメリカのハリケーンや竜巻の異常襲来や世界的な集中豪雨など、世界各地の異常気象はすでに私たちの地球になんらかの大きな変化が起こっていることを示していることは間違いないと言えましょう。

 そんな中で、このコラムでは災害から守る自己防衛の住まいセルフディフェンスハウス、さらには環境重視の自然住宅。そしてわが国特有の家族の高齢化と大量定年退職に備え、これからの私たちの家づくりはどうあるべきかを提案してまいりました。

 前回は“社交的なキッチン”を中心に、夫が会社中心の交流から家中心の交流を体験し、まずは夫が自立することが第一のステップ、とお話ししました。そしてさらに自身が最後の最後まで住める“自助自立できる家”をつくるのです。そう自分で何でもできるセルフサポートの住まいです。

 どんな素晴らしいシステムキッチンでも料理はしてはくれません。家もいくらハイテクとなっても人を支えてはくれません。高齢になって車椅子のバリアフリーも実際は自身では動けません。例え電動でも狭い家の中では老人が車椅子を自在に操縦することは難儀なのです。なによりも便器やベッドに一人で乗り移ることができません。

 今リフォームや家づくりのチャンスを得たなら、いや、今の家を見直して何かしようと思うなら、本当の老後の生活、それも長い人生、うんと先のことですが……、を今、真剣に考えるのです。もうすでに子育ては終わり夫婦だけの住まいとなっています。夫婦の家は意外にも“夫婦で考えてはいけない”のです。なにも仲良し夫婦に水を差すつもりはありませんが、家づくりのお手伝いをしていますと、この夫婦が大問題?となるのです。

 子育てが終わり、(あるいはこれから終わった後……)2人の長い人生は、まさしく夫婦それぞれです。特に会社人間だった夫はすでに家にはリーダーシップがありません。例えそう思っていても、奥さんにそのように支えてもらっていると言った方があっているのです。ええっ?と思ってもその家には夫の未来がないのです。ゴルフやなにかの趣味があってもほとんどが外のことで、同僚と楽しくやっていたとしても退職すればよその人になります。私自身、設計事務所の仕事でそうした企業の人々と付き合っていてまさにそのことを痛感するのです。

 今の家づくりやリフォームは、そのことをまったく予測していないような気がします。現実は子育てをしながらもあるいは勤めながらも、奥さんは身の回りに多くの友人や相談相手をつくり、さらに子どもたちとも本音の付き合いができています。従ってその家づくりにははっきりとしたビジョンがあり、そのディテールもしっかりイメージされているのです。

 反対に夫は、理想はあっても現実の暮らしとはかけ離れていることが多く、その半面、経済的なことに神経質になり過ぎ、かえって奥さんの堅実的な考えをねじ曲げてしまうこともあるのです。特に子どもたちや親との同居に至っては、夫は理想論ばかりとなり、おかげでそのプラン展開はかなり危なっかしいものとなり、結果うまくいかないケースも多いのです。

 私は多くの家づくりでこうしたご夫妻の間に入り、意見を別々に聞きだし、やがて2人の共通項を見出し、それをテーマとしてプランを提案するのです。まさに犬も食わない……を身を持って行い、仲人役というか、時には家裁の調停委員のような役割をもしています。

 つまり夫婦の家づくりはそれほど難しいということなのです。特に老後の2人の現実を話し合うことは難しく、できれば避けて通りたいことです。しかも定年退職ともなると、今後の収入や年金など、今までとは違った夫婦の環境となるのです。しかもさらに歳を取った夫の姿が妻には生々しくみえていると言うのです。このことを夫は知る由(よし)もないのです。そればかりか夫は、妻はこれからも今のまま、が理想なのだから仕方ありません。

 その結果、老いた建て主が、結局最後は入院したり、老人施設に移されたりするのです。せっかく建てた家の中で人生をまっとうできるように設計されていないばかりか、その環境ができていなかったためです。その環境とは、夫が妻の行く末をどうみるか、またそれにどう対処するか、そして自分自身がいかに自助自立して生きていくか、の覚悟を示すことです。

 私ごとですが、自身の健康な老後生活のためと、介護が必要になったときの最低限の自立の策を考え、あるプロジェクトを進めています。10年ほど前から住まいの健康とその材料開発をし、さらに足腰が不自由になっても家の中で自在に動けるセルフサポートシステムを設計、実際に製作し、建築リフォーム&リニューアル展に出展したり、事務所の応接室に設置展示をしたりしてきました。正直、設計事務所の売り上げを破産寸前まで資金投入し、何度もギブアップを考えてきましたが、スタッフの理解を得て、今やっとあるメーカーと共同製作をするに至っています。設計室のスタッフは日常の設計活動に加え、本当によく協力してくれたと感謝しています。

 次回はそのセルフサポートシステムの詳細と、その発想に至るまでの経緯をお話ししたいと思います。

プロフィール

顔写真 天野彰(あまの・あきら)

 岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

 著書には、新刊『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

 天野さんへのご質問、ご意見は、[天野さんのホームページ別ウインドウで開きます]から。


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