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「天野彰のいい家いい家族」

収納は「収出」に! 収納のマトリックス

2007年09月02日

 人の性格にもいろいろあるように、住まいにも片付く、片付かないなどの性格があるようです。それは主に、その家の収納の状態によりますが、住む人の性格によってもその家の状況はかなり変わってきます。

イラスト

「時間」「空間」「人間」収納のマトリックス

 物を買わない人、これが一番素晴らしいのですが……。出ている物をすぐに収納に片付けてしまう人。これも確かに身辺はすっきりします。しかし、さてその物を使おうとすると出てきません。仕方なくまた物を買う! これではせっかくの収納も役にたちません。

 「収納」とはまさに収めて納めることで、「収」は、ことを収め、「納」はさらに奥に納めてしまうのです。おうようで寛大な人のことを「懐が大きい」、「懐が深い」などと言います。しかし、こと収納に限っては大きな納戸や大きな物置スペース、奥行きの深い押し入れや引き出しは、物の上や奥に物が重なり、物は死蔵されてしまいます。つまり収納は入れることではなく、出すことを考えるのです。すなわち“収出”が重要です。

 収納のしかたはよく人の頭の良しあしに例えられます。頭の良い人を、「頭の中の引き出しが良く整理されている」などと言われるのがそれです。私も物を整理し覚えることはあまり得意ではありませんが、知識がいくら多くても整理されていなければ、いざという時なんの役にも立ちません。収納上手は頭の中の整理のいい人と同じです。

 ではいったいどうやって整理するかですが、それは大きく分けて三つのやり方があります。それこそ「時間」「空間」「人間」です。そうです! 収納はまさにT・P・Oです。それを「いつ・どこで・誰と」使うかをよく考えて連想できるようにしましょう。確かにそのまま放置すれば、いずれ忘れてしまいます。慌てて入れるとどこに片付けたかを忘れ、いくら探しても出てきません。そのことを「うろ覚え」などと言いますが、よほどの天才でない限り、一度だけの知識などなかなか思い出されるものではありません。

 まさに物の収納の引き出しと同じなのです。まず引き出しにインデックスが張られ、それを使う時の順とか場の順、さらにその相手の順に並べ、連想ゲームのようにドラマをつくるのです。

 つまり日常のこと、さらに月ごと、そして特別なことです。同様に場や状況、さらに人との交流の関係に合わせます。これらに覚えやすいインデックスをつけます。覚えやすいといっても何も丸暗記することではなく、連想する言葉などで、キーはやはり「時間」「空間」「人間」です。朝から夜、そして週の曜日、さらに春夏秋冬、一年行事、まれなできごとの順です。

 そう、その時や場をイメージするといろいろなことが連想できます。私は人の顔をイメージしながら名前やいろいろな事象を思い出します。お陰でいつもドラマがいっぱいで楽しくなります。

 もちろん、それらをすべて暗記していては頭の収納能力が無駄になります。コンピューターやノートブック、あるいは手帳にその在りかを示します。まさしく、出しやすい「収納のマトリックス」をつくるのです。と、ここまではまるで頭の中の整理なのか、住まいの収納なのか釈然としませんが、確かに共通することが多いのです。したがって出し入れがしやすい収納上手な人は頭が良いということになります。

 しかし、現実はいくら頭の良い人でも、日常の生活でそんな整理が出来るかどうかです。毎日忙しい中、いちいち寄り分け収納などできるはずもありません。そこで、グッド・アイデアです。まず「一時預かり」となるような場所を設けます。買い物帰りや、贈答品の多い季節など、玄関や勝手口の片隅に「一時預かり場所」を設けるのです。これらは何があるか一目瞭然(りょうぜん)と分かるように放置します。整理しないと落ち着かない感じが大事です。時間が出来たら整理すればいいのですから。

 では「収納」ならぬ「収出」のための“マトリックス”をどうつくるかですが、イラストのように、まず「時間」はその使用頻度、季節ごとに近づけ、遠ざける配置をします。次に「空間」は日常の生活の行動に合わせ、出しやすく使いやすい収納にします。つまり欲しいところに物があることが大切です。そして「人間」は個人の居る各部屋ごとに、さらに家族のものは家族が集まるリビングやダイニングに、という具合に配置します。

 次回は収納のマトリックス、「生活プランは収納プランに一致」について具体的なお話しをしたいと思います。

プロフィール

顔写真 天野彰(あまの・あきら)

 岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

 著書には、新刊『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

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