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「天野彰のいい家いい家族」

中高年、趣味を生きがいにいきいきと!

2007年09月30日

 前々回からの「家を建てると若々しくなる」などのお話に、多くの方々からご意見やご賛同を頂いています。なるほど団塊世代の人々がこれからの生活に抱く関心の深さには改めて驚きます。

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地震で高齢者が住む多くの住宅が倒壊した

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建て主のTさんがご趣味で始められたポーセレンアート作品

 中でも一番多かった意見は今さら定収入もなく、どうやって家を建てるのか? あのローンの苦しみなどもう懲り懲りだ、といったものです。もちろんその背景には今後の年金支給や医療費負担増などの不安が根強く、まさしく今日の時世を感じさせられるものです。

 しかし、かく言う人たちも、今の家が急激に古ぼけてきて、あちこちに不具合も起きたり、子育てが主目的だった家が大人の生活や老いの暮らしに不向きなものであったりするなど、先々の不安を多く抱える人も多いのが実情です。

 確かに増築に増築を重ね、子育てが終わった“空き巣”のような広い家は掃除やメンテナンス、光熱費も大変で、第一、今後必ずありうる大地震に対しても不安です。阪神・淡路大震災ではまさしくそんな老夫婦が住む古い家が倒れ、その下敷きとなって多くの高齢者が被災されたあの傷ましい光景もまだ記憶に新しいのです。

 だからと言って、即、建て替えるか、あるいは大幅なリフォームで本格的に耐震工事をやるとなると相当悩み、迷います。いずれにせよ、これだけの大工事を遂行するにはなにか大きなきっかけでも無い限りなかなか踏み切れません。大きな地震があって驚いたり、息子たちから一緒に住もうと同居の誘いがあったりなどで、やっと重い腰を上げます。しかし、家がそんな危険な状態となっていてもその気にならない最大の理由は、むしろ将来の目的が無い。あるいはその必要の無さが原因だと言えそうです。

 前回の堀江さんのように60歳まで大変な苦労をされ、その後やっと事業が軌道に乗って80歳以上になってオルゴールに惚れ、博物館のような家を建てられた例は極端としても、なんとしても60歳は若いのです。

 すでに、定年間際、あるいは定年後に家を建て替えるなどの大改修を決行された人たちからは、私のコラムを読んで、「確かになにか趣味や目的を持つことがなによりだ」とのコメントを多く頂きました。

 なかには「家をつくること自体が日常の生活にないことで、普段使わない脳細胞や、神経を使い、胸がわくわくしてきた」という人もいました。家をつくることを通して、考え方や嗜好が自分でもびっくりするほど変わり、今からインテリアデザイナーやコーディネータにでもなろうかという人もいるほどです。

 そんなことからか、デザイナーはともかく、なじみやすい写真や陶芸、さらにはパッチワークや彫金などにこりだす人も多く、中にはプロ並みの腕前になって教えていらっしゃる人も多いのです。こうなると資金などどうにかなる! などと太っ腹になられ、自宅に工作室やアトリエはもとより轆轤(ろくろ)や窯(かま)までつくる人も出てきます。このあたりの資金や計画手法はおいおいこのコラムでもお話をさせていただこうと思います。もしお急ぎの方は前回ご紹介しました拙著「六十歳から家を建てる」(新潮選書)をご覧いただければ幸いです。

 ここで大切なことはその人たちが資産家だとか、特殊な人たちではなく、定年退職され、あまりにも長い老後に備えて汲々として(失礼)いらした人たちばかりなのです。いわく……。

 「どうせ残された人生、楽しまなくちゃ!」、「いざとなったらこの家を売ればいいし、貸してもっと小さなアパートに住んでもいい」、「どちらかが亡くなれば保険で整理」などと割り切った方もいらっしゃれば、「いずれどちらか両親の遺産が入るわよ!」などのちゃっかり型とさまざまです。実際に”生涯清算型”のローンさえもあります。

 辛らつなお話はさておき、こうして趣味を持つことによって人生ますますはつらつ、イキイキとされることが傍目にもうれしく感じます。お陰で、愉(たの)しみの家はイキイキとし、地震にも強く、いつまでも安心して住め、ひょっとしたら思わぬ収入もあるかもしれない(?)のですから一挙両得どころか、一挙五得のような感じです。

 そんな建て主の一人、Tさんから「私のお師匠の作品展をご覧になって! 皆さまもお誘い下さい」と弾んだ声で「陶磁器絵付の又間美代子展」のはがきが送られて来ました。Tさんがそうしたご趣味に出合えたことに嬉しくなってご紹介いたします。会期は10月8日から14日までです。詳しくは「アトリエ・マチス」のホームページをご参照ください(「アトリエ・マチス」のホームページ)。皆さまもご覧になって絵付の体験をされてみてはと思います。そのTさん自身の作品をここ(上写真)に紹介します。これ本当に趣味? と思える力作ばかりで驚きました。今度はきっと20年経ったご自宅をアトリエに改造したい! などと言ってこられるかも知れません。

プロフィール

顔写真 天野彰(あまの・あきら)

 岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

 著書には、新刊『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

 天野さんへのご質問、ご意見は、[天野さんのホームページ別ウインドウで開きます]から。


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