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「天野彰のいい家いい家族」

「狭楽し減築手法」間取りのやりくり

2007年10月14日

 子育てが終わり、勤めも終わるといわば老後の生活となってしまいます。しかし、人生はこれから。何か趣味を持つことをお勧めしています。趣味が高じて芸術になり、また「芸は身を助く」のとおり、収入を得ることになるかもしれません。これぞ希望に満ちた豊かな人生です。

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東京の家を処分して建てた那須の平田さんの家と展示室

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展示室内部、無垢のヒノキのやぐら造り、中央が舞台

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展示室に工芸品が並んだ状態

 何も難しいことを始める必要はありません。まずは身近なことから始めましょう。インテリア、パッチワークのような縫い物、さらには染付けなど、女性にとっては今までの家事の延長のようなことからで十分です。家の改装やリフォームなどを機に興味を持ち、これに「はまる」奥さんも多いようです。家のリフォームや建て替えはとてもよいことなのかもしれません。

 台所に入ったこともなかったご主人でも、料理に興味を抱く人が多くいます。これまでの台所は狭くてとても中に入れない、あるいは自分の勤めが忙しく口が出せなかったため、奥さん専用のキッチンだったかもしれません。だからこそ、夫婦で使える開放的なキッチンにしてみましょう。建て替えまではともかく、リフォームで台所を改造し、手料理を作ることから始めるのもいいでしょう。

 建て主でもある私の友人は、退職後直ちに料理教室に通いはじめ、今ではプロ並みの腕前になりました。「いずれは自宅を改装してプチレストランをやる」と息巻いています。また、会社勤めでほとんどマスターしたはずなのに、パソコン教室に通い始めている友人もいます。パソコンがどこまで進化したか、あるいはビジネス用ではないデジタルアートや、フォトグラフィックスなどのテクニックを習得し、人生の集大成ともいえる写真や資料をまとめたいとのこと。しかし、実際のところはご両人とも、若い人たちに混じっていたいのがホンネのような気もしますが……。

 いずれにせよ、創造の世界の一端に触れると、どなたもイキイキと、時を忘れ、毎日を謳歌することができます。今まであまり外に出たがらなかった奥さんが、ご主人からカメラの扱い方を学び、最初は身の回りの情景を撮りはじめ、次第に外に出かけるようになったとか。今ではご主人と一緒にカメラを携え、山歩きや旅行に出かけているそうです。旅行先でプロ並みのカメラを携えた夫婦を多く見かけます。奥さんの写真作品とご主人のデジタルアートで共同個展を開いている夫婦もいます。

 これまでの子どもたちの部屋をつぶして夫婦の寝室にすると同時に、1階にあった風呂などを持って上がって2階にまとめ、余った1階のスペースをアトリエ兼展示室に改造する例も多くなってきました。友人に貸している人もいます。隣がリビングダイニングになっていて、展示の終了後は毎日パーティーを開いているそうです。

 この考え方が「狭楽し減築」手法の一つです。家そのものは少しも小さくなっていませんが、自分たち夫婦が暮らす場所は間取りを見直し、やりくりして縮め、そのかわりアトリエや展示室、あるいはプチレストランなどのスペースをひねり出します。「減築」は家の中で住むこと以上に、広く大きな可能性を生み出すことです。

 写真は定年退職後、東京の土地建物を売って那須に土地を購入した平田さんご夫妻の家です。夫婦が住む家とギャラリーをつくり、海外転勤時代に集めた工芸品を展示、時には習得した能を舞うそうです。「亜細亜美術工芸館」と銘打ち、那須の展示館の一つになりました。これも「狭楽し減築」の一つです。次回は、物の整理と空間の立体利用についてお話しましょう。

プロフィール

顔写真 天野彰(あまの・あきら)

 岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

 著書には、新刊『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

 天野さんへのご質問、ご意見は、[天野さんのホームページ別ウインドウで開きます]から。


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