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「天野彰のいい家いい家族」

危険な床下収納! 外壁・階段下に涼蔵庫

2007年11月04日

 ちょっと不穏な発言かもしれませんが……。最近、住まいにおいて老人のバリアフリーと言うことに少々疑問を感じています。まださほど高齢でもないのに新築やリフォームというと、家中を手すりだらけにしたり、平屋の暮らしにしたりして段差をすべて取り払うことが、果たして高年齢層に良いことなのかどうかと思っています。

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踊り場のある安全な階段

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床上“涼蔵庫”

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手づくり階段下の引き出し式涼蔵庫

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階段下涼蔵庫引き出し詳細

 若くても身体の不自由な人や、すでに足腰が思うように動かない人はちょっとした段差でもつまずくと危険で、車椅子も自由に動けません。しかし、老人のリハビリテーションの専門家は、伝いながらでもまだ歩ける人は極力体を動かし、きつい2階への階段も日に一、二度は上り下りすることで、かなりの間自立して暮らせるようになると言っています。実際、知人の整形外科医は、膝や足腰の悪い人に階段のような段差を上り下りしてもらって、その動きで障害か運動不足かを判断していると言います。結果、多くの人が運動不足だそうでです(実は私もかつてそう言われたのですが……)。

 確かに、家の中で事故が多いのは段差とドアです。ドアの枠や畳と廊下の間などの2、3センチほどのほんの小さな段差が危険で、浴室や階段などはむしろ活発な若い人や子どもの事故が多いと言えます。ドアの事故は、風当たりの強いアパートで風にあおられて閉まったドアに指を挟まれる、トイレなどで急に開けたドアにぶつかる、ドアのノブに袖が引っかかる、さらには引き戸の引き手に指をくわれるなどです。

 大きなけがにつながることが多いのは段差です。なかでも階段での事故が圧倒的に多いです。リフォームの際など、階段は極力緩やかなものにし、ここだけは両側に手すりを設けましょう。さらに途中にできるだけ踊り場を設け、回り階段などは極力避けるべきです。しかし、危険なのは思わぬところの段差です。増築などで廊下の途中にできた段差など、つまづいたり、もんどりうったりして危険です。

 なかでも危険なのが床下収納。とくに狭い台所の床下収納は便利で、奥様方の希望が多いのですが、事故が起こると大けがのもとになります。私の事務所では落とし穴的な危険のある床下収納は取り付けません。このことで奥様方と言い争いになることもあるのですが、それでもどうしてもと言う場合は誓約書のようなものを書いて頂くほどです。

 長い日常生活は何が起こるか分かりません。普段いくら注意していても、さて、床下収納の中を掃除しようとふたを開けたところで、珍しい旧友からの電話が入ることもあるでしょう。思わず長時間話し込み、終わったとたんに自ら落ちたり、小さな子どもが駆け寄ってきたりなど、あっと言う間もなく事故は起こります。このケガは大きなものになります。床下収納は年中涼しいことからビン詰めや味噌、しょうゆや漬物などの保管場所としてガラスのビンやつぼなどが並んでいます。ここに落ちるのですから大変です。

 そこで私が提案するのが床下ならぬ床上“涼蔵庫”です。キッチンなどの下の棚や北側の外壁に面した収納の一部を断熱ドアにし、ここにこうしたビンや野菜などを収納します。もちろん動力も何も必要なく北側の壁に穴を開け、格子や防虫網で雨や虫などの侵入を防ぎ、外の涼しい風を入れます。冬はみかんなど室内では腐りやすいものも保管でき、まさしく冷蔵庫ならぬ涼蔵庫になります。

 写真は私の手づくりの階段下涼蔵庫です。階段下の三角形のデッドスペースですが、奥行きの深い(90センチほどの)3つの引き出しを設け、その底をメッシュ(蛍光灯などの光拡散グリル)にし、さらにその床下に穴を開け、床下から冷えた空気を入れるようにしています。見栄えはあまりよくないですがとても重宝されています。

プロフィール

顔写真 天野彰(あまの・あきら)

 岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

 著書には、新刊『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

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