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「天野彰のいい家いい家族」

さあ皆さん、本物の家を建てましょう!

2007年12月30日

 清水寺の森管長は2007年の一字に「偽」を選ばれました。「偽」とは真と偽の二値論理の対で、対義語は「真理」と言う……。いったい衣食住すべてのどこまでが真理なのかも釈然としない今の世の中ですが……、とにかく2007年のいやなことすべてをここでとどめ、新年はねじ曲がってしまった衣食住のすべてを一度リセットして、その真理を一から建て直したい気分です。

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清水寺の舞台の縁板の交換と根太や梁の修復工事

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子孫に残すべく骨太の自然素材の臼杵市のA邸

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外壁を通気性の高いハンギングタイルで覆った横浜のT邸

 それにしても「偽」の文字を改めて眺めてみますと、「人」の「為」と書くのも皮肉な話しです。いったい「人」とは誰なのか、何の目的のために重大な偽装をしたのか? 現場の怠慢となれ合い意識。さらに経営サイドの利益追従のための締め付けと、その加減のほどのコントロールとモラルチェック。言葉だけのコンプライアンスとかサステナブルなどなど、実状から離れた用語が一人歩きして、誰もが真理を見失ってしまっているのではないでしょうか?

 株の偽装に始まったマネーゲーム。さらに耐震・健康を売り物したリフォーム詐欺と、良心のモラルハザードの点滅が始まり、堅実にものをつくり、こつこつと商いをしているすべての人の信頼を奪ったのです。

 こと建築の耐震偽装に限って言えば、事態は多くの人命に関わる重大事件で、それが建築士の能力レベルによるものなのか、システム上の欠陥、あるいはその盲点を突いた確信犯なのか? いずれにせよチェック機能が発揮されなかったことで、“真理”を徹底追求することなく、慌てて、すべてを疑って審査確認する状態となっています。

 今までにない絶対能力をはるかに超える作業量のため、建築の確認業務の現場は疲弊し、また人々は依然としてびくびくしながら家を建てたり、買ったりしています。

 憂うべきは、こんな状況の中で、建築士をはじめとする建築技術者や作業者、さらには肝心の家や建物を建てようとしている人々の夢や意欲を減退させ、建築と住宅の現場は低迷し、危機的な状況となり、建設を軸とするわが国のGDPにさらに大きな打撃を与えかねないことです。

 政治経済はともかく、住宅や医院づくりを長年に渡ってお手伝いして来た専門家の一人として言えることは、ただ一つです。今、私たちがしなければならないことは、私たちの子ども、さらにはその孫のそのまた孫たちが安全に住める家と街、そして“地球”を残すための工夫と知恵を発揮することです! それがすべての真理でありモラルです。200年住宅だ、サステナブル建築だと言う前に、1000年も昔の先人たちがやってきた本物の家づくり、都市づくりの真理を奈良や京都あるいは鎌倉や白川郷を訪ね、もう一度見直してみてはどうでしょう。

 今のわが国の家づくりや建物づくりが根本的に違った方向にいるかどうか、気がつかれるはずです。重大な一つが湿気対策で、独立した裸の構造と断熱方法、さらには設備との取り合いにあることが分かります。建物の構造が蒸れて湿気が出るようではいけません。

 本コラムで何度もご紹介した清水寺の舞台をはじめとする何十年サイクルの修復メンテナンスなど、何百年も前につくられた柔軟でシンプルな構造と計画的なメンテナンスシステムとそのディテールを、今改めて継承することが大切です。建築士や施工者だけでなく、建て主の皆さんとの合作でなければできません。

 さあ、皆さん。新年は心改め、次の時代に残せる本物の家とは何かを考え、一緒に建てましょう!

 次回は「初心忘るべからず! 臆病な建築家誕生?」です。

プロフィール

顔写真 天野彰(あまの・あきら)

 岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1-5-1/TEL03-3469-1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国に精力的に行っている。その実業務からTV・新聞・雑誌などで広く発言。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任する。

 著書には、新刊『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数がある。

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