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建物ではなく居住の場所(2) 間取りではなく「場取り」

2008年2月3日

 壁で構成された現代の住まいは、間仕切りも壁で区画され、気密性も高く冷暖房も良くききます。反面、家の中は密閉され、個室化されます。家族がその間取りに影響を受けて阻害され、夫婦や親子関係が悪くなることさえもあります。

 私は住まいのプランニングを「間取り」とは言わず、あえて「場取り」と言っています。何よりもまず、住まいは家族が一緒に暮らすところです。居間、食堂さらに寝室や子ども部屋など、決まった部屋の配置、すなわち「間」を取るのではなく、家族それぞれがいろいろなことをする「場」を配置(設定)します。

 家族それぞれが、生活や作業をする「場」、自分の居場所や持ち物などを置く「場」、さらには立場や存在を示す「場」があります。これらを合わせて配置・計画することが、真のプランニングまたはゾーニングです。物理的な「間取り」ではなく、生活の「場取り」です。

 住まいの風通しの悪さや、台所やトイレ、浴室など、住まいの主要設備は、昔から人体に例えて肝心(腎)要と呼ばれ、要注意の重要項目です。伽藍や屋敷を建てる際、それらの項目に注意を徹底しながら、場や所を配置してきました。拙著「建築家が考える『良い家相』の住まい」(講談社)の執筆時、おおいに学び、感銘を受けました。

 本来の「間取り」の「間」とは、部屋ではなく、もっと深い意味の事象で、空間・時間・人間の「間」であり、唄(うた)、舞(まい)囃子(はやし)の調子の「間」でもあり、哲学的には「空」あるいは「無」なのです。

 「間」は夫婦の間、親子の間、外界との間、世間との間であり、重要な空間です。英語のspace=「何もない空間」の方がもともとの「間」の考え方に近いのかも知れません。

 家族はその「間」の中で接しながら、さらにそれぞれのしたいことをし、また自然や外界とも接し、深い思想をさらに高めたのです。数奇屋や茶室はそんな思想の中から生まれ育まれてきました。昨今、急浮上してきた、親子の問題、夫婦の問題、そして老人の問題、さらには肝心要の生きる問題のすべてに、今の「壁の住まい」が原因ではと思えてなりません。

 写真は、家族が合掌の一つ屋根の中で、一つの炉に暖められて住む、白川郷の合掌造りの家です。昨夏に続き、今回は冬の厳寒の中で泊まりました。遠く江戸時代の生活を全身に感じた印象は後日お伝えします。ライトアップされ、妙に見世物化されたにぎやかな郷。消灯後の7時半以降、観光客が去った後の山村に静けさが戻ります。翌朝、50年以上前のわが故郷と同じ空気を吸うことで、心が洗われました。短い時間でしたが、両極端な郷に身を置き、複雑な心境でした。その気持ちを引きずったためか、「間」と「場」についてもとりとめのない文になってしまいました。

 次回は「建物ではなく居住の場所(3) 家族あっての家」です。

プロフィール

天野彰(あまの・あきら)

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。

著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。

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