2008年2月24日
「二世帯住宅」がはやりです。背景には今まで核家族で住んできた親子が、親の高齢化に伴い、互いが離れて住む不安と、さまざまな不便と不経済を感じることが理由です。少子化で一人っ子も多く、親の側は年金の目減りや医療費負担増などから、本音では同居の希望が増えています。しかし、自分たちが今まであまりにも勝手気ままな核家族で暮らしてきたため、子夫婦との同居に不安を抱く人も多いそうです。
かつての朝のNHKドラマ「おしん」とはまったく逆で、親夫婦の方が子夫婦に気を使い、べったりの同居に不安を持っているようです。そこで、親子が1、2階別々に、勝手気ままに住める「二世帯住宅」ということになるのですが……。
実はこの「二世帯住宅」、本来の「同居」とはまったく違うものです。しかも、かえって嫁姑関係が悪くなることも多いようです。
嫁姑関係が生まれる息子夫婦との同居は完全に分けた二世帯住宅に、母娘となる娘夫婦とは、べったりの同居でも「やりやすい」といった風潮もあるようです。ところが、多くの同居住宅設計のお手伝いをしていると、この風潮とはまったく逆の結果を招きがちです。
まず二世帯住宅ですが、いずれにせよ親子が一つの敷地、一つ屋根の下で暮らす限り、どうしても鼻を突き合わせて住むことになり、玄関を別々にすることだけで、別世帯のように住もうとすること自体に無理があります。
音もすれば話し声も聞こえ、孫は行き交い、外で顔を合わす機会もひんぱんにあります。嫁姑関係がうまくいっていれば問題はないのですが、いったん何か意見の違いなどがあると大変です。今度は、別々だけになかなか修復のチャンスもなく、息子などを通じて意見などしようものなら、さらに関係が悪くなり、近くに居ること自体が辛くななります。
これは「スープの冷めない距離」関係でも同じです。近くに居ながら「スープを持って来ない」どころか顔も見せない、何か怒っているのか? 具合でも悪いのか? などといろいろと気を使うことになります。それもまだ夫が元気なうちは、なだめ、愚痴も聞いてくれるのでしょうが、亡くなりでもしたら大変です。「何でこんな鬼ばばあになってしまったのだろう?」と本人が嫌になるほどだと言う人もいます。
嫁姑こそ、あえてべったり同居し、多少のいさかいも乗り越え、互いにいつでも会えるようにすることが大切です。姑、すなわち義母からいろいろなことを学び、さらに半世紀以上も昔の生きた情報を孫に伝えてもらうことができるのです。これこそ「同居“共働”住宅」で、かつての農家や商家のように親子夫婦が互いの役割を発揮できます。教育文化的であると同時に、建設費もエネルギー費も安く、生産性も良くなり、「同居」のメリットを受けることができます。
もしも、嫁姑が互いにその期待もなく、自信もないのなら、二世帯どころか、スープの冷めない距離にも住まない方が良いでしょう。
反対に、娘同居こそ、依存し過ぎないようにしっかり二世帯に分けて、親娘が互いに自立した生活を促し、“婿殿の立場”を尊重することが大切です。嫁と違って娘だけに、いくら喧嘩しても、すぐにやってくるし、孫も甘えます。二世帯にきっちり分かれていれば、甘やかし過ぎずに済みます。
次回はこの「親子べったり同居」にも、二世帯住宅にもなる? 不思議「マジックドアの二世帯“含み”住宅」についてお話ししましょう。

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。
「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。
著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。
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