2008年3月9日
アパートすなわち二つの「同居契約」世帯の家
一部を貸して「契約同居」も可能の例
ここのところ親子同居のお話しを続けています。積極的な“共働の同居”こそ、経済的なばかりか、育児と老後の安心があるなどと書きましたが、ご賛同やご意見のメールを数多く頂きました。「同居にそんな“共働”の期待など出来ない」、あるいは「子どもがいない人はいったいどうすればよいのか?」といった意見もありました。
最近では、お子さんがいても「いないも同然」と言う親夫婦が多いのが現実です。海外での就職や国際結婚などで外国に行ってしまう場合もあります。海外まで行かなくても、職場は全国に拡散しており、地元に戻ってこない人は多くなりました。さらに少子化が進んで一人っ子が多くなり、嫁いでしまったり、別の街で家を建ててしまったりなどです。これでは子どもがいても、一緒に住むチャンスなどありません。
老いて同居のありがたさは、なによりも近くに親しい人が居ることです。土地建物があっても、豊かな老いの生活を送るためには、まず生活費と医療費が大切ですが、肝心の年金や健康保険制度の雲行きが怪しくなっています。行政は在宅介護を推奨していますが、老いた夫婦が老いて自宅で暮らしても「老老介護」になってしまいます。揚げ句は独居老人となり、ついには家屋敷を処分して老人施設入居へ、と誰もが浮き足立つのが現実です。
そこで「子どもが居ないも同然」という夫婦も含め、あえて“同居住宅”を建てることを私は提案しています。といっても、本当の同居ではありません。家屋敷を建て替え、あるいはリフォームして、イラストの断面のような賃貸アパート併用型にします。間取り的には二世帯住宅に似ていますが、下の階や一部を貸すことで老後の糧にします。しかし、賃貸契約の仕方と住まい方が従来のアパートと異なります。
たとえば、近辺の家賃相場の半分ほどにするかわりにちょっとした条件をつけます。各アパートにベルを付け、家主の緊急時には救出搬送を頼む。あるいは庭の草取りや買い物を頼むなどです。そのため、契約時には本人と直接面接し、かつその両親などに保証を願うなど、入居契約というよりも「同居契約」をするようなものです。
私の事務所では、子どもが居なくても同居が可能になるこうしたプランづくりや家づくりをお手伝いさせていただき、多くの人に喜んでいただいています。
次回のテーマは「一つの敷地に親と姉・弟の3家族が住む」です。
岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。
「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。
著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。
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