2008年3月16日
親そして弟さらに姉夫婦が同居するTさんの家
同居住宅は親夫婦と子夫婦が一緒に住む家ですが、同居の家づくりを何軒かお手伝いして思うことは、子育て、孫育てという視点から見ると、いろいろと貴重なメリットがあることが分かります。
「二世帯住宅」というと、親子夫婦が気兼ねなく、互いが勝手気ままに住む同居生活を誰もが思い描くようです。親子が1、2階にきっちり分かれ、玄関も別々。同じ敷地内の同じ建物に他人同士が気ままに住むマンションかのような錯覚を持つ人が多いのです。
ところが、親子だけに、気がねや疑心暗鬼が多くなり、かえって住みにくい人も多いようです。とくに息子夫婦と同居の場合、父親の亡きあとは、姑一人が住むことになり、今までの嫁との関係によっては、まるで人柄が変わってしまうようなこともあるそうです。これが「二世帯住宅は鬼の住みか」などと言われるゆえんなのでしょうか。
そこで前々回のコラムでは、二世帯住宅のようで実は同居住宅という「二世帯“含み”住宅」の提案をしました。一、二階きっちり分かれて住みながら、いつの間にか一体同居住宅になる不思議なマジックドアを持つ家です。
互いの玄関脇や階段の上がり端に、このドアを設けます。カギはどちらかが開けても相手が掛けていれば開きません。ある日、双方が解錠すれば一気に同居住宅になる仕掛けです。
ここまでするか? とお思いでしょうが、この慎重さこそ安心な同居住宅をつくる第一歩です。くわしくは拙著「新しい二世帯『同居』住宅のつくり方」(講談社+α新書)をご一読下されば幸いです。
同居は2組の夫婦(家族)が居て、そこに子ども(孫)が住んでいます。私が考える“同居”とは、2組の夫婦が一緒に暮らし、共働きの子夫婦とそれをサポートする親夫婦による共働生活です。家族の一人ひとりにちゃんとした役割があります。かつての農家の住まいのように「父ちゃん、母ちゃん、兄ちゃん」の3ちゃんであり、子どもたちはその中で学び育ちます。こうした生産的で積極的同居こそが「親子共働住宅」であり、前向きな同居になります。
高齢者が増え、年金不安や介護保険の疑問点を考えると、やるせない不安がよぎります。一方、子夫婦の多くは「働きに出たいけれど、子どもが心配。おばあちゃんが一緒に住んでくれるといい!」と思っています。
もう「同居」を恐れることはありません。私も体験上、義理関係の嫁姑は、思い切ってべったりと一緒に住むほうがかえってよい関係になりやすいと思います。嫁姑には年齢のギャップもありますが、それ以上に生活観の違いや、考え方の違いが重要です。四半世紀に及ぶ「時代差」は価値あるもので、料理や生きた風情、そして子育ての姿勢など、一緒に住んで、できるだけ行動をともにし、学ぶことも多いのです。
さらに子ども(孫)の成長にとって、親夫婦の“半世紀”の時代差は、生きた歴史や情操教育です。同居の本質とも言えるものです。親と子、そして孫が学び、互いに高め合って暮らすうち、日常生活の役割が自然に生まれてきます。孫の世話や食事の支度は親が、親子にそれぞれはっきりした役どころも決まり、「同居共働生活」の始まりです。
写真は、息子夫婦が母と同居し(奥の家)、ベランダを挟んだ別棟(手前)に姉夫婦が住むと言う「親そして弟夫婦、さらに姉夫婦が同居」のTさんご一家の例です。この間を3人のお孫さんが行き交います。
3月21日午後7時30分から放映予定のNHK「ニュー東京人」では、この家などお孫さんとの付き合い方をテーマに取り上げます。残念ながら放送は関東圏のみのようなのですが……。ご覧いただければ幸いです。

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。
「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。
著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。
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