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「天野彰のいい家いい家族」

改正基準法で伝統建築文化が失われる?

2008年03月23日

 耐震偽装事件の再発防止を狙った改正建築基準法が施行して9カ月がたちました。建設需要の低下のみならず、日本の伝統的建築文化の喪失を招きかねない状況を呈しているようです。

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I邸棟上名工匠が集まった!

 偽装の発覚を受け、国民の安心と安全を旗印に急きょ施行された法改正の主旨は、建築確認の審査の厳格化と構造計算適合性判定の新設です。しかし、申請には山ほどの書類作成と構造計算作業量が増大して時間がかかるようになり、さらに厳格化のためチェック要項も複雑となりました。審査に時間と人手がかかり、当初はチェックする側での不統一もあり、大きな混乱を招くことになりました。審査や判定員などの人材不足から、審査確認済みに至るまで早くて3、4カ月、増築などを含む物件などは6カ月以上もかかりました。

 改正への移行は、昨年6月20日施行日を期限に、くい打ちなど基礎工事着工を条件に改正前基準を可としたため、駆け込み申請が殺到。都心部では受け付けすらできなかったところもあったそうです。この混乱に拍車をかけたのは、建て替えや増築物件など移転や解体などの準備作業では改正前基準を認めなかったことです。改正法条件に切り替えて二重の構造計算を強いられ、しかも申請が振り出しに戻るなど、最悪のケースも多く起こりました。改正までの準備期間があまりにも短かったことが原因でした。

 この結果、着工件数は昨年の改定以降、前年度比40%近くも減少。その後の半年間の建設需要減は累積数兆円にのぼり、今年に入ってからも低調です。建設需要の減少はすなわち、建築関係者の仕事を奪うことを意味しています。現代の、商社のような大手元請業者はともあれ、実際のもの作りを担当する下請け業者は経済的体力もなく、町の工務店が直撃を受けました。遅れた着工を待てずに経営困難に陥り、倒産したところも多いのです。

 こうした小さな下請け業者や工務店には、真面目に建設に取り組む建築技術者が数多くいます。こうした人々が職を失うことは、社会にとっても国家にとっても大きな損失です。長年に渡って培われた木造軸組みなどの伝統工法もすんなり認めず、ものによっては小住宅でも大型建築物と同様の審査が強いられています。

 私たちの設計した家を形にしてくれる町の建築業者や工務店にこそ、優秀な大工や左官など貴重な伝統技術を持つ職人がいます。彼らが失業や離職に追い込まれています。こうした名工や匠にあこがれ、夢を持っている若い職人たちが失望して転職することにならないように願っています。まさしく文化の喪失につながります。

 人々の夢であり、またわが国の基幹産業でもある住宅・建設行政はすべての省庁が一丸となって対処すべきものです。国家の危機などと言うとちょっと大げさかもしれませんが、皆様はどのようにお感じですか?

 次回は「開放される日本の家に高気密高断熱?」の予定です。

プロフィール

顔写真 天野彰(あまの・あきら)

 岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。

 著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。

 天野さんへのご質問、ご意見は、[天野さんのホームページ別ウインドウで開きます]から。


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