2008年4月13日
四国脇町の卯建(うだつ)。左右にあるウサギの耳のような防火壁京都町家の平面図と断面図。まるで巨大な換気扇であり、家相も考えられている。拙著「建築家が考える『良相の家』」(講談社)より
町家は、なにも京都に行かなくとも、戦禍を免れた古い町中に行くとどこでも見ることができます。また、街道沿いの町家にはあの卯建(うだつ)という防火壁を発見することもできます。努力して街道の表通りに店を出すことは「卯建が上がる」という表現のように、めでたいことです。
人が集まり、密集した都市に、開放的な“和”の住まいを適合させるのはなかなか大変です。武家や大名屋敷は塀を高く巡らし、その中で一軒家のような開放的な家に住むことができます。しかし、町民や街道で店を出す商家は大変です。限られた敷地の中で防火のために隣家との間は土壁にし、その壁に沿って風の通る“和”の住まいをつくる。それが町家です。
ほとんどが都市の住まいとなった今、町家こそが現代に生かすべき都市住宅だと思うのですが、なぜかいまだに街の中で「野中の一軒家」を建てようとしていることが問題です。集合住宅と違って、戸建ての分譲住宅はどんな狭い敷地でも庭つきの一戸建てにしようとします。結果、隣棟間隔が1メートルにも満たない、あのクレバスが割れたような塔状の家ばかりが林立することになります。しかし、同じ屋根が続くタウンハウスは棟割り長屋のようだからなのか、分譲住宅として人気がありません。建築基準法、民法そして区分所有法などの法整備が不十分であることが原因のようですが、新たな“町家方式”を構築することが大切だと言えるでしょう。
京都を訪れると、にぎやかな街中にもかかわらず、しっとりとした町並みのたたずまいと町家のおっとりした雰囲気に包まれています。心のふるさとを感じると同時に時代とのギャップも感じます。
町家には都市住宅1000年の歴史とも言うべき工夫と生活の知恵があります。まず、平面は路地と路地裏を通り抜ける「通り庭」に接して植栽や坪庭があり、それらをはさんで南と北の住ブロックがあります。外部に接しているのは町家の南と北側だけです。さぞかし風の通りにくい家と思いきや、家そのものが“大きな換気扇”になっています。
断面から見ると明らかです。前後の住ブロックの屋根瓦が太陽で熱せられ、上昇気流を起こします。すると中庭の空気は負圧となって、屋根の上昇気流に吸い上げられるように昇り、室内に風が入り込みます。その風は表と裏の両路地から中庭に向かって入ってきます。夕暮れ時に、路地に打ち水をするとさらに蒸発潜熱で冷えた空気が室内に呼び込まれ過ごしやすくなるのです。
一見、閉鎖的に見える京の町家は、夏が暑く、冬は寒い盆地である京都の地形を生かした科学的な工夫と、都市の防火対策も施されたプロテクトハウスです。そこで次回は「プロテクトハウス現代町家」のお話です。

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。
「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。
著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。
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