2008年5月11日
15年ごとに変わる住まいの時計“愛の時計”
阪神・淡路地震で二階が重く倒れた家が多い
拙著「夫婦の家」(講談社+α新書)
子どもたちが小さい頃は母の日に一輪の赤いカーネーションに手紙を寄せて「母の日」の感謝をしてもらったものです。それが中高生ともなると、「何のこと?」といった感じで、がっくりします。子どもたちはすでに“親の子”ではなく“大人”として家族の一員になっています。
IT化が進んだ現代の拡散社会では、家族は決して一つではありません。いざ家づくりやリフォームとなっても、夫と妻は別々。夫婦は一つなどと思い込んで寝室の提案などしようものなら意見がまとまらず、子どもの扱いやその予算や工法など問題山積、揚げ句の果ては夫婦喧嘩にもなりかねません。
そこで家族を“分解”し、「夫婦」「子ども」「親夫婦」などと分けてプランニングをします。実は、これも間違いです。夫婦の寝室も夫と妻それぞれ、子どもも男の子か女の子、あるいは長女、次女などと別々です。子どもに対する夫婦の思いも別々で、家族は「それぞれ」で「それぞれの意見や要望」があるのです。
にもかかわらず、実際の家づくりの現場ではなぜか、「妻の言う通りにしてやってください」とか「あなたが決めて」などとなります。えてして陥りやすいこうした「あなた任せ」の家づくりは、子どもたちが育った後もまるでおもちゃ箱のようになります。
私が提唱するアナログ式の「住まいの時計」で、人生をちょっと眺めてみてください。家は育児型、社交型そして養老型へと15年ごとに変化していきます。子育ての期間はあまりにも短く、老後があまりにも長いことが分かります。夫婦の“愛の時計”で、家は最初から最後まで「夫婦の家」であることがよく分かります。
私の場合はまず、夫婦別々に要望のみならず、将来のことや子どもたちへの思いなど、本音の意見をこっそりと聞き取ります。双方の意見の調整をしながらプランを練り提案をします。「夫婦喧嘩は犬も食わない」をあえて“食って”家づくりの仲人役を務めます。新築もリフォームも主人公は夫婦で、最後まで二人が住む家です。この機会に夫婦の距離を縮め、生涯の家にまとめて行く工夫と努力が必要です。
苦心して建てた家ですが、あっという間に子どもたちは成長して出て行きます。こんな家を最近は“エンプティネスト”と呼びます。まさに“空き巣”です。
阪神・淡路大震災もそうした老夫婦が住む家が倒壊し、多くの被災者を出しました。二階に残された子どもたちの重い“残骸”が家を押しつぶしたとも言えます。今、都市部には手入れも行き届かない“老いた家”が急激に増えています。核家族化が進み、人のみならず、都市そのものも高齢化しています。
本来の家づくりでは夫のやるべきこと、妻のやるべきことの「分担」があったはずです。想定される家族変化や建設費や維持費などのシミュレーションは夫の仕事。日常の暮らしのドラマづくりと演出は妻の仕事です。すると親のこと、あるいはわが伴侶の介護などシリアスな問題も見えてきます。
忙しさにかまけてすべて妻に任せきりにしたため、定年間際の世代に“家の問題”が急浮上しています。大げさに言えば、これは家族のみならず、医療や社会、さらには地球規模の環境問題にまで影響しているとも言えそうです。
反対にこの家づくりの機会(試練?)に夫婦の関係が修復した例も多くあります。家づくりは夫婦にとって、結婚、出産に次ぐ第3の試練であり、長い人生へのスタートでもあります。
その「夫婦の家」で忘れてはならないのは色気です。その設計のコツは夫婦ではなく、子どもを忘れ、大人の「男」と「女」として住まいを考え「男と女の家」を大胆に演出します。リビングは大人の空間となり。子どもたちはそうした親たちを見ながら大人に育ちます。“子どもの大人”が多くなったのはそうした夫婦を見ることなく、子育ての家で育てられたからかも知れません。詳しくは僭越ですが、拙著「夫婦の家」(講談社+α新書)をご高覧あれば幸いです。
いよいよ5月21日から「建築リフォーム&リニューアル展」が東京ビッグサイトにて開催されます。22日は私も講演します。ぜひご来場ください。次回は「人生に合わせ住まいをリフォームする」をお話したいと思います。

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。
「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。
著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。
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