2008年5月25日
16坪の親子同居のSさんの家
同居“共働”のマトリックス
「あなたたちの国は『同居』という良い“システム”があるからいいですね」
「何でも『二世帯住宅』を建てると税制の優遇や助成まであるらしいですね?」
北欧やイギリスの友人たちと高齢者問題の話をしていたときの彼らの発言と感想です。彼らが使った「システム」「優遇税制」「助成」などの言葉に、私の頭の中は疑問だらけに。一体どこからこんな情報を聞きつけ、感想が出るのか? と考えさせられました。確かにかつて、住宅金融公庫の老人同居の割り増し融資があるにはあったのですが……。
彼らの中には建築家もいて、「DO−KYO」や「NISETAI−JYUTAKU」などの日本語も知っていて、大変興味を持っており、ハウスメーカーなどの二世帯住宅の間取りも集めていました。そして、これらの家のメリットやデメリットを調べ、実際にそのプランを建て主に提案したこともあるそうです。建て主から「もし“家族が了解する”なら素晴らしい!」と絶賛されたとか。もちろん、その案は採用されなかったそうですが……。
彼らの国は、社会保障の財源として軽く20%を超える消費税(付加価値税)や、その他の負担を合計すると、総所得の40%近くにもなる税負担を強いられています。彼らにしてみれば、高齢者対策として「同居システム」が“もし可能なら”相当なメリットになると思えたのかもしれません。
折しも、日本の政府・与党は5月下旬、「高齢者の安心と活力を強化する緊急措置」として、高齢者と住む3世代同居世帯の固定資産税や所得税の軽減を検討する原案を示しました。75歳以上の独居老人世帯は現在200万を超すといわれ、20年後には倍の400万世帯を超すとの推計(人口問題研究所)もあります。今回の原案は、独居世帯の安全確保のための財源も危機に瀕していることから、高齢者同居世帯を優遇する狙いです。なるほど西欧の友人たちが言う、優遇される「同居システム」のようです。
しかし、“何か”をもくろんだ同居優遇制度の条件やルールが、家族や親子の本来の想いや思想の根底を揺るがしてはいけません。時代が進んで核家族の生活に慣れた現代の家族が、最近の二世帯住宅に見られるように、不慣れな「同居」に安易に踏みきったり、経済や合理性ばかりを目的としないことです。わが国もすでに「同居」は“もし可能なら”という提案に過ぎないのかも知れません。
このコラムで何度も申し上げているように、同居は「頼る同居」から、親子が互いに自立し、“共働”できる同居が大切ではないでしょうか。次回は老いの生活に親子が共働できる「親子同居“共働”住宅」についてもう少し詳しくお話ししたいと思います。

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。
「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。
著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。
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