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宵山の京の粋な町家「長江家」

2008年8月3日

写真祇園祭で四条大路を巡行する船鉾(2007年7月17日)写真新町通りで飾られる宵山の船鉾。横に見える屋根が長江家写真長江家の表大戸と連子格子、通り庇と二階むしこ窓を見る写真通り庇の両端は防火防犯の隔壁(うだつ)写真大戸を入って見返る。通り庭の三和土(たたき)左が店

 真夏の暑い中、今年もコンチキチのお囃子でおなじみの京都・祇園祭が荘厳にとり行われました。

 7月17日の山鉾巡行をクライマックスとする祇園祭の歴史は千百四十年近くもさかのぼる古いものと言われます。京の東の八坂神社の祭礼で、文献によると、貞観11(869)年、全国各地に疫病が蔓延したため、当時の国の数とも言われる66基の鉾を京の神泉苑に立て、神々を祀り、神輿を担いでまわる祇園御霊会という祈祷祭式がその始まりのようです。その数々の鉾は今日までの長い歴史を経て、町中を練り歩く山や鉾となり、さらに巨大化し、時の宮中や将軍家からの寄進も得て装飾され、日本一豪奢で荘厳な祭りになったそうです。

 実際、祭り男の私は毎年、この暑い季節になると心落ち着かず、気が付いてみると京都に居た!、と言うほどです。なんといってもハイライトの17日、何十人もの人を乗せてミシミシギシギシとゆらゆら揺れながら動く壮大な鉾の巡行が圧巻です。人々の熱気とコンチキチのお囃子の中で、各町々の鉾や山は昔ながらの方法で木組みし、縄で搦(から)めて組み“建てる”のです。この柔軟な仕口こそが、巡行の際の衝撃を吸収して壊れない理由です。白川郷の合掌造りと同じ木組みで、私が木造住宅の構造に取り入れている“吸震”の考え方と同じで驚かされます。これらがまるでタイムスリップしたかのようなこの町のあちこちで、汗をかきながら作業する老若男女の様子に、生の歴史と今も生き続ける日本の文化を感じ、興奮します。

 数ある鉾の中の一つに「船鉾」があります。その建て位置は四条烏丸の南西、新町通綾小路下ル船鉾町で、他の山鉾に比べて舟形の形態と複雑な構造が大変興味深いものです。7月の13日頃から四条大路を挟んでこの新町通りを中心にあちこちの路地の家々はそのお宝を蔵から出し、いわゆる宵山飾りをします。町中がまるで美術館のようになります。

 暑い宵山の催しの中で、ひときわ目を引くのがこの船鉾の建て位置にある「長江家」です。もともと呉服卸問屋で、店構えは通りに大きく幅を取り、連子格子と大戸を設け、通り庇で客を迎えます。2階はむしこ窓で塗り込め、軒の両端は防火防犯の隔壁(うだつ)を立て、南北2棟の連続長屋となっています。

 宵山ではこの長江家も貴重な屏風絵などを蔵から出して飾り、その内部を公開しています。華やかな船鉾を前に、京の密集地の中でしっくり町並みになじんでいる粋な町家と言えましょう。保存状況も良く、それが京都市の指定有形文化財に指定されているゆえんです。

 次回はこの長江家内部の構造と夏の装いについてお話したいと思います。

プロフィール

天野彰(あまの・あきら)

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。

著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。

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