2008年9月28日
減築し空いた場所をアパートにして貸す
手つきトイレと腰かけ浴槽、手前が寝室のK邸
ソファーが閉まって普通の寝室
ソファーが開くとトイレやバスルームとなる
旧事務所に設置された2号機の走行テスト
このコラムで何度も申し上げていることですが、ビートルズ世代がやっと老後の生活を迎えようとしている矢先、後期高齢者医療制度、年金支給の先送り(先細り?)、そして先行きの見えない不景気の厳しい現実に加え、夫婦双方の高齢の親たちの介護と、まさしく「老々介護」にも直面しています。
しかし、少子高齢化時代を想定して、定年退職を前に思い切って自立のための減築リフォームをし、余った1階やその一部をアパート(下宿?)やガレージとして人に貸して建築資金や生活費の一部にあて悠々自適な暮らしをしている人もいます。
減築リフォームとは、不要な部屋や腐りかけの部分を解体し、構造を入れ替えて強化して地震に備えます。コンパクトな生活空間にしながらも自然素材を多用。無塗装の床や壁、そして開け閉めしやすい大きな窓と引き戸にして風通しを良くします。収納と照明は手の届く範囲だけにとどめ、ドアの引き手やスイッチも大きく、光るものにします。いざと言う時は閉じ込められないように外に押し出したり、外れるものにします。
さらに、元気なうちは極力2階に住んでもらうように説得します。阪神・淡路大震災で、どんな家でも2階の方が1階に比べリスクが少ないことが判明したからです。いよいよ2階に上がることが困難となった時は、1階の貸しスペースに移動すればいいでしょう。1階の貸しスペースは、身内の夫婦でもよし、他人の夫婦でも家賃を安くして、緊急の場合の通報や救助などのセキュリティーをお願いします。「2S=セルフディフェンス+セルフサポート」のセルフディフェンスです。
しかし、家が平らで、手すりだらけのバリアフリーで快適過ぎると、筋力が弱まり外出も減って運動不足になります。足腰を弱くなると、転倒骨折の原因にもなり、実際に重度要介護老人のほとんどは、この骨折が原因だと医師も指摘しています。
多くの介護施設や老人病院を設計してきた経験から、老人の住む住宅においては車いすにあまり期待していません。お年寄りが車いすでスロープを自力で昇ったり降りたり、あるいは車いすを器用に操ってお台所ができるでしょうか。確かにパラリンピックで見るような若い元気な障害者や、モータ―付きの車いすを操縦できる闊達(かったつ)な老人は別ですが、実際には足腰が弱って腕や手も衰弱しますと、車いすもそう簡単には動かせません。車いすへの乗り降りや、ベッドや便器に1人で乗り移ることはまず不可能だからです。こうなると寝起きのベッドやトイレなど、あえて段差がある方が腰掛けて立ったり、さらにベンチや手つき台付きトイレ(写真参照)などを伝って移動できる方が楽です。
多少の段差や緩い階段などはかえってリハビリとなり、医師たちも、手足や腰を日頃から鍛えることが大切だと言います。
私が開発しているのは「車のない車椅子」です。天井から支えられて歩くこともできる「自立生活支援装置」、すなわちセルフサポートです。足腰の不自由な人をマリオネットのように胴で支え、音声認知操作で動きます。
プライベートな8畳ほどのスペースに、スチールフレームを設置。ベッドや書斎、さらにはトイレや浴槽などの水回りもその中に用意し、ソファーマットなどで蓋(ふた)をします。足腰が不自由になっても自分でトイレや浴室に行き、書棚や物探しなど自由に動き回る。リハビリにも役立ちます。動きのセッティングによっては奥さんとワルツ?も踊ることも可能です。
拙著「減築のすすめ」(講談社)と「ライフステージにあわせた家づくり」(東京書籍)のプレゼントを増冊しました。どうぞご応募ください。
次回は「私たちはいったいどこに住んだらいいのでしょう?」です。

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。
「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。
著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。
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