2010年4月30日
床の間のない和室やリビングに「置き床」を
出窓を利用した雛飾り
アルコーブの“床の間”
「家」の文字は元来屋根を意味する「宀」の下に、祀(まつ)りごとにささげる生贄(いけにえ)としての豚、あるいは先祖の象徴として象、すなわち「豕」より成り立っていると言われます。だとすれば家は、自身にとっても子どもたちにとってもただ住むだけのものではなく、遠く先祖を結ぶ尊い場でもあると言えます。
前回、「床の間も仏壇もない家で“躾(しつけ)”や“命の敬い”を子どもたちに教えることは至難の業ではない」とのお話をしました。また「子どもに家の中で格式やマナーを教育することが親のつとめで覚悟だった」かのようなお話もいたしました。
案の定、国内外から多くのご意見を頂きました。そんな中、意外にも海外で暮らしておられる方や若い人からは賛同される方が多く、反対に年代的にご高齢の方の意見は封建的だとか、近代的な国際社会の家ではナンセンスなどの批判を頂きました。
中でも興味深いのは、これから家を建てたい、あるいはマンションを買い求めたいと言う人からは、『高層住宅や小さな家にこそ、あえてそんな格式を持ちたい!』と言う意見が多く寄せられたことです。せっかく家を持つのですから、床の間や仏壇など住まいの“へそ”を大切にすべきだと言うものでした。
確かにわが国の家には独特な伝統や形式がありました。それこそが文化ですが、明治から大正にかけ、多くの異文化が入って西洋化され、さらには戦後は米国の影響を大きく受け、ついには高度成長期の住宅ブームで今の家の形となったようです。わが国固有の家の伝統や形式がモダンになったのではなく、それらをすべてかなぐり捨てたかのようにまったく新しい家となってしまったのです。
でも、みなさんはどんなに狭くても、例え和室がなくてもリビングにサイドボードを置いて祭壇のようにしたり、イラストのように部屋のコーナーに分厚い板などを置いて「置き床」のようにしたりなど、それぞれ工夫をされていました。
このほか、床の間がなくても出窓をつくり、そこに季節の設(しつら)えをし、写真のように雛(ひな)飾りをする。リフォームなどで壁に小さな穴を開け、アルコーブをつくって、季節の花を添えられるような新しい形の“床の間”にする。など様々に工夫ができます。
このように、例え核家族で、次男、三男の家であっても、わが家の「いにしえのルーツ」を探り出し、そっと手を合わすことのできる、わが家の象徴的な“へそ”をつくリ、「とこしえの家族」とともに住むことはできるのです。

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。
「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。
著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。
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