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家もエコポイントの時代 住まいの原点を考える

2010年5月14日

写真住まいと人生の時計。次の世代まで回る写真実家に建て替えた老いて住む大黒柱のある家 大垣市Y邸写真同上 内部大黒柱のある家(単純な田の字プラン)

 新築の家もそしてリフォームも、自動車や家電と同じようにエコポイントの時代となりました。断熱など一定の省エネ基準を満たせば商品交換ポイントとなり、やりようによってはその場で30万円を限度として追加工事の費用負担も可能とのことで、これからこれを売りに施工の推進をはかろうとするメーカーも増えることでしょう。

 確かに住宅や建物関連の排出するCO2は莫大で、そのためのエネルギー軽減は温暖化対策には不可欠ですし、かつ景気低迷の刺激にも寄与するものと思われます。過去にも太陽光発電などに助成制度がありましたが、その助成金額の割りに施工費が大き過ぎたため、みなさんあまり積極的ではなかったのですが、耐震や高齢化対策などのリフォームの必要に迫られ、各種助成や減税措置などと総合的に合算して考えると確かに有利にはなるはずです。しかし残念ながらこれらを一括して申請する窓口もなく、また煩雑な申請をトータルで取り扱ってくれる業者も少ないと言うのが実情です。

 行革だ簡略化だとの世の必要に反して、肝心の耐震、高齢、さらにエコと各種申請窓口が多く、申請手続きが以前に増して煩雑となり、なかなか期限内にすべてをまかなうことが難しくなっています。本来はまさにここで建築の確認申請をする建築設計事務所の出番なのですが、世間では建築家や設計者は特殊な家づくりやデザインのためのものと思われているのか、なかなかお声をかけてくださらないのです。こうした建築士の役割や設計費の意味をご存じでない人も多いのかもしれません。そして、結局のところ車や家電のように、家もできあいの物を見て選んで買う方が安心と言うことになるのです。

 でも、ここで改めて考えなければならないことは、新築でもリフォームでも、人生という長い時間に関わる住まいは、本来こうした面倒な手続きを踏んで、悩み悩んで苦労して一緒に“創るもの”なのだということです。独自のプランやデザイン、色彩や照明、インテリアなどを決めるのに悩むのと同様に、こうした手続きや、予算や工事の進行のチェックも欠かせません。その結果、自分と家族に合った、世界でたった一つの家となり、さらに年を追うごとのわが人生と家の将来もしっかりと見極められ、何よりもその費用効果も明確になるのです。

 昨今の量産化される家やマンションは、自動車のような規格化された商品となり、その部品も工法もすべて現場施工のしやすいものへと変化しています。何千万円もする“高額商品”でもある家が、「一個いくら」となり、しかも品質を安定させるためか、ほとんどが外国材や集成材となりました。こうして家は決まり切った箱型の「壁の家」となり、気密性がよくなり過ぎて、シックハウスが問題となったりするのです。

 そして今、ハウスメーカーやマンションデベロッパーは自動車メーカーと同じようにランク付けされ、手づくりの家は特殊視されるようになり、大工や左官などの伝統職人は少なくなり、輸入材に比べて山から切り出す手間や効率が悪いと日本の林業は衰退し、ひいては放置されて荒れ果て、花粉症などを引き起こす原因にさえなっています。こうした視点から考えても、良質で相性のいい国産木材を積極的に使った軸組みの家づくりこそが、本来はエコポイントの対象となるべきとも思うのですがいかがでしょう。

 またまたご意見を頂きそうなのですが、住まいのエコポイントの発想が年中エネルギーを使うという前提の断熱率にあるため、風通しの悪いベニヤの箱のような家は近い将来巨大なごみとなりかねません。家を、自動車や家電の商品のように扱うことがとても気になります。

 ここで改めて“家を持つ意味”と、わが国のエコな住まい方の伝承を考えてみたいものです。ちょっと足を止め、かつてのわが暮らしを思い出してみませんか。サッシも断熱材なく寒く不便な自分たちが育った家を…。

 その家で親たちがなにを大切に暮らしていたか、子ども部屋もなく、冷暖房も床暖房もなく、便利なキッチンや、洗浄器付の水洗トイレも、ひねるとお湯がでるユニットバスもありませんでした。燃料は炭と廃材の薪で、糞尿は肥やしでした。ほんの50年前ですが、そこから灯油に始まり、プロパンガスになり、さらには電気へ。そして森林破壊を引き起こす外材を大量に使用した家へ…。今こそ、“失われた大切なもの”がなにかを考えてみてはどうでしょう。

 小さくてもいい、親たちが、そのまた親たちが大切にしてきた家の価値を、見つめ直してみましょう。私自身も子育てが終わったいま、足を止めて、かつて家族や自分にしてやれなかったことを、もう一度やり直してみたいと思うのです。さらに老いた時も、家を捨てて知らないところへ行ってしまうのではなく、今の家をリフォームするか、建て替える。そして本来の開放的なあの“エコな家”を取り戻したいと思います。それを最後まで暮らせる家にし、さらに後世に残せる家にしたいのです。その上で断熱材を入れて、窓を二重にする。これを人生の最後の仕事としたいものです。

 次回は「子どもたちに『夫婦の家』をアピールする!」です。

プロフィール

天野彰(あまの・あきら)

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。

著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。

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