子どもが増えて成長すると、自分の部屋を要求するようになり、急に今の家が狭苦しくなってしまいます。しかし、費用をかけて増築したり、倍もする家賃のアパートやマンションに引っ越したりして広さを確保しても、肝心の子どもたちはあっと言う間に成長し、わずか10年もすれば家から出て行ってしまいます。そんな抜け殻のような広い家に二人だけで住む老夫婦が多いのが実情です。
「狭い」の反対は「広い」です。それでは「狭苦しい」の反対はというと、大概の人は「うんと広い」とか「だだっ広い」などと答えます。なるほど広い家はどなたにとっても夢なのです。
2LDKか3LDKで子どもに1部屋ずつ与えたら親の寝室はもちろん、LDKも狭苦しくなります。では、と頑張ってもう1部屋多い4LDKにする。今のマンションを売ってさらに1000万円以上足して広い家に移る。一戸建ての一部屋増築も、おおむねこんな感じです。これで確かに家族一人ひとりの部屋ができますが、毎月のローンか家賃が10万円ほど増え、今度は家計がひっぱくし「狭く」なります。
これは大変と、郊外のそのまた郊外へ引っ越しすれば、同じ価額で広くはなりますが、今度は往復3、4時間もの通勤や通学時間のために家族や友人との交流や世間が「狭く」なります。私はこれを「狭さの三すくみ」と言っているのですが、私たちはしょせんこの「狭さ」からは逃れられない運命なのでしょうか。
便利な都市の住まいは高くて狭いのです。「狭苦しい」の反対は「だだっ広い」ではなく、狭さは変わらずとも狭苦しい住まいの「苦」さえ取り去ればなんとかなります。
その最たる例が、子ども部屋です。2LDKの2部屋の一つの6畳を1人の子どもが堂々と使っていることが多く、大の大人の夫婦2人が6畳1間とは! これは不公平です。さっそく6畳の子ども部屋をタンスなどで仕切って3畳の広さにし、残りの3畳を納戸として、家中に散乱しているものをこのコーナーに集めてしまいましょう。
費用をまったくかけずにタンスで仕切った子どもコーナーは、まるでコックピットのようで落ち着き、意外にも子どもはご機嫌です。タンスの背にはポスターだの地図だのが張られ、子どものマイウオールとなります。一方の「納戸」にはタンスはもとより掃除機や新聞、雑誌、さらには頂き物が納まり、そこに可動式のラックを置けば、ウオークインクロゼットになります。これで狭苦しかったLDKも寝室もすっきり広々となります。
また、部屋を要求する2人の子どもには、一つの6畳の部屋に市販の2段ベッドを真ん中に置き、イラストのように立体的に互い違いに仕切って2人の子どものコーナーにします。狭い3畳の部屋にもかかわらず、子どもたちにとっては彼ら自身の世界ができて、個室の喜びで広く感じるはずです。
彼らが成長して出て行ったときは、そのベッドを取り払い、元の6畳に戻して夫婦の遊び部屋にしましょう。増築することなく「狭楽しい」住まいは、老後も「広苦しく」になりません。

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。
「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。
著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。
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