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2012年10月11日
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天野彰のいい家いい家族

リフォームのきっかけとその思い

文と写真:天野彰

写真:復元された駅舎外観(筆者撮影)拡大復元された駅舎外観(筆者撮影)

写真:復元されたドーム屋根(筆者撮影)拡大復元されたドーム屋根(筆者撮影)

写真:東京駅の東西コンコース床(筆者撮影)拡大東京駅の東西コンコース床(筆者撮影)

写真:外観は三十数年前のままリフォーム(豊田市山下邸、筆者設計)拡大外観は三十数年前のままリフォーム(豊田市山下邸、筆者設計)

 東京駅・丸の内側の赤れんが駅舎がリフォームされ、大正期の創建当初の外観を復元して全面開業しました。連日多くの人たちが見学に来ています。公共施設の中でも駅舎だけに、通勤客はじめ全国から来る多くの旅行者たちも眺めていきます。

 東京駅は1914(大正3)年、皇居の真正面に、新橋駅と上野駅間の象徴的な駅として建てられました。駅舎の設計には日本銀行本店などを手がけた辰野金吾氏(1919没)を起用。日本の近代建築の威容を誇るべく3階建ての重厚な赤れんが組積造の洋風デザインで、南北の一般コンコースの床には大理石モザイク、明るいトップライト付きの巨大なドーム屋根をつくり、当時の一般庶民が体験したことのない、とても目をひく威容でした。

 あれほど長辺の組積造の駅舎ですが、1923(大正12)年の関東大震災の揺れにもほぼ無傷でした。残念なことに、終戦間際の米軍機による空襲で炎上、ドーム屋根と3階部分を焼失しました。

 戦後すぐの修復工事では材料もままならず、ドーム屋根に代えて八角錐の屋根が架けられ、3階部分は再建できませんでした。その後、丸の内駅前の整備計画や私ども建築士をはじめとする市民団体などの声も高まる中、国鉄から変わったJR東日本は1999年に駅舎復元を決定。2003年には国の重要文化財にも指定されることになりました。破壊されて「仮修復」の姿に重文指定されることも不思議でしたが、一時は解体して高層化する意見もあった建物の復元工事が07年5月から開始されました。

 神社仏閣や国宝でもない公共建築が創建当時の姿に完全修復されることは、リフォームの意識、あるいは思想にかかわる重要なできごとだったのです。

 文化財はともかく一戸建ての家のリフォームでも、そのきっかけや原因はさまざまです。「単に古くなって外観も薄汚れて住みにくくなった」「地震や災害が不安でこの先の耐久性も心配。耐震リフォームをしたい」「(自身が)高齢化し、バリアフリーになっていないため、車いす対応や設備をよくしたい」などです。しかし、こうした要件で検討するうちに「やはり壊して建て替えた方が楽だし、すっきりする」という意見が圧倒的になってしまいます。

 マンションのインフィルのリフォームはともかく、一戸建てのリフォームでは予算にも限りがあり、耐震補強か水回りなどの部分改造が多く、テレビなどでよく紹介される全面リフォームは、建築制限などで建て替えようがないケースが多いようです。

 しかし、わが家は家族にとって、愛着のある文化財です。伝統技術による名匠の建物の場合や、現在では入手困難な無垢の柱や板などが使われている場合もあります。

「壊したくない。なんとか残したい」

 リフォームにはこんな思いをぜひ持っていただきたいものです。

 東京駅の赤れんが駅舎は、1914年の創建当時の姿を再現するため、伝統技術を駆使し、戦後の修復では再建されなかった3階部分も、67年ぶりに復元されました。鉄骨を芯にしたれんが積みの1、2階の構造をそのまま生かし、3階の構造は鉄筋コンクリート造とし、外壁に化粧用のれんがを張る。新しいれんがは2階以下と比べて違和感が出ないように、色を合わせるなど顔料の調合にもこだわったそうです。

 外壁の復元に伴い、戦後の修復工事で3階から2階に移された柱飾りを本来の3階に戻し、復元された3階には、2006年から休業していた東京ステーションホテルの客室などが入りました。

 耐震化にもこだわり、各所に制振のオイルダンパーを入れ、駅舎の下に免震ゴムを採り入れました。

 復元された南北コンコースのドーム屋根は元のカップ型に戻し、高さは35メートル。戦後の八角屋根より2メートル高くなりました。3階回りと天井は、和をイメージした干支や花飾りのレリーフ、2メートル四方におよぶ鷲(わし)の彫刻花飾りのレリーフなど、忠実に復元されています。

 復元された駅舎を眺め、中に入って100年近く前の東京を、そしてその暮らしを思うことで、現在のわが街、わが家、そしてわが暮らしをもう一度思い出していただきたいものです。

プロフィール

天野彰(あまの・あきら)

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。

著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。

天野さんへのご質問、ご意見は天野さんのホームページから

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