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2012年10月25日
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天野彰のいい家いい家族

「最期まで住める家」の「生活維持装置」

文と写真:天野彰

写真:手つきトイレと浴室(R邸:筆者設計)拡大手つきトイレと浴室(R邸:筆者設計)

写真:ホームナーシングユニット(天井つり歩行器)拡大ホームナーシングユニット(天井つり歩行器)

写真:ベッドからベンチ伝いに便座へ(川崎K邸)拡大ベッドからベンチ伝いに便座へ(川崎K邸)

イラスト:手が弱くなっても手つきトイレ拡大手が弱くなっても手つきトイレ

 家づくりのお手伝いをしている立場で世の中を見ていますと、昨今の政治や経済のあり方、あるいは社会情勢からすると、なにやら本格的な少子高齢化の兆しがいよいよあちこちに現れ出したような気がします。

 この先の長寿命の暮らしを考えれば、人々は必然的に我慢して耐える生活を余儀なくされます。そんな中で今回の消費税増税で、かつてのような「駆け込み景気」を期待するかのような政府の思惑とは裏腹に、実際の建設にかかわる現場では誰もが意欲半減になり、加えて医療費負担増や年金支給の先送りなど、今後の医療・社会保障に期待が持てず、人々はさらに貝のように殻を閉ざして動かないような感じさえします。

 本当は、巨大地震の可能性も増していると言われる今こそ、将来に備え、住まいのリフォームや建て替えを考えるべきときです。住まいはすでに総世帯数をはるかに上回って過剰に存在しています。古家もかなり建て替えられ、耐震性も向上しているようですが、それでも自身が「最期まで長く暮らせる家」と考えると、はたして巨大地震や津波に耐えられる構造か、さらには介護が必要になったとき自立して暮らせる家か、などといささか疑問が残るでしょう。

 私事で恐縮なのですが、先日わずかな間でしたが手術で入院し、自由に動けなくなった自分自身を体験しました。本当に自身の老後について実感できました。いくら近代的な病院であってもとても快適とは言えず、看護師も一生懸命世話をしてくれるのですが、見るからに忙しそうで、ちょっとしたことは我慢して遠慮せざるをえません。もし老いて足腰が立たなくなり、長い療養生活となったらどうなるだろうと、大いに考えさせられたものです。

 多くの人が家を建て、リフォームもしました。しかし、いざ介護が必要となったらその家を出て入院するか老人施設に入ることになってしまいます。しかし、これからはそう簡単には病院や施設にも入れそうもありません。核家族化が進んだことから、都合よく子ども世帯と住むこともできません。本当にそれでも自ら老後の活路を見いだすことができるのでしょうか。

 高齢者はタンス預金をしたまま、自分の老後は自分で守ろうとすると、ますますお金が市場に出回らなくなり、経済はさらに悪化するかも知れません。そこにまたリーマン・ブラザーズのような金融不安が起こるのかも知れません。

 幸いにして土地と家、あるいはマンションがある人は、わが家を改造してそこで余生を送れるよう積極的に考えることが重要です。老後の生活に対する不安は、住まいの補修や維持管理です。さらに自身の介護の手間ですが、24時間サービスなどはとても期待できません。介護を家族に頼ることも見込めません。

 そこで、改めて言えることは、今の家を在宅介護をしやすくすることはもとより「自己介護」できるようにすることです。その一つが「住まいの自動化」です。不自由になったとき最低でも自身でトイレに行けるようにします。さらに入浴や調理もできるようになれば生活がどれほど活性化するか分かりません。

 私はこれを生命維持装置ならぬ「生活維持装置」と称し、セルフサポートシステムとして提案しています。すでに十数年にわたって企業と開発してきたものですが、足腰が弱っても体を支え生活できる「住空間移動システム」です。天井から支えた歩行器のようなもので、段差があろうとも介護の程度に合わせて歩行を補助し、さらに身体全体を支えて移動できます。音声感知で作動してベッドまで迎えに来てくれて、ベッドからトイレ、浴槽や車いすに1人で移動できます。おむつから解放され、自分自身でゆったり入浴することも可能になり、プライバシーも確保できるのです。

プロフィール

天野彰(あまの・あきら)

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。

著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。

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