路地裏などの込み入った場所やプライバシーのない敷地で家を建てる場合、高みの見物ではないですが、緩い階段とつかまりやすい手すりを両側に設けるなどして、2階にリビングを設けることをお勧めしています。
前々回にも「老いたら二階に住む」と書きましたが、二階は日当たりがよく涼しいのです。プライバシーも抜群で、夜間窓を開けて寝てもそれなりに安心です。二階に上がってしまうとあまり降りたくはありませんが、日常生活や来客などでどうしても降りる必要があり、知らぬ間に足腰の鍛錬にもなります。
二階建ての場合、二階は寝室や子ども部屋などの個室が多くなりがちですが、二階をリビングやダイニングにすると、目前に景色が広がり、空が近くなって明るく開放感があります。
一階には寝室や納戸など小部屋が多くなり、柱や壁も必然的に多くなって耐力が増します。反対に二階は、その上が屋根なので大空間にすることが可能になります。屋根の勾配(傾き)をそのまま室内に取り入れて勾配天井にすれば、二階は山荘のような雄大な空間になります。
しかし、いくら大空間といえども、2階がダインニングキッチンとリビングだけでは一階にすべての部屋が収まりません。そこで子ども部屋を二階にしたり、家事コーナーを二階のDKのそばにします。子ども部屋は一階にあるよりは落ち着きます。知らないうちに外出していたとか、勝手に友だちが来ることもありません。家事コーナーをDKの近くに置くことで、主婦が日中、快適な場所に居ながら洗濯をしたり、子どもと接したりすることが可能になります。洗濯物もそのままベランダに干せて便利です。
一階が手薄となると用心が大変です。面格子や背の高いフェンスに囲まれた中庭やガラリシャッターなどで防御することが大切です。モノはできるだけ二階に持ち込まず、出来れば一階に大型のシューズクローゼットや納戸を設け、コートなどの外出着を置き、いちいち二階に上がらなくても着替えられるようにします。
買い物の食材を二階の台所まで持ち運んだり、生ごみを出したりするために、勝手口にサブの階段があれば便利です。ごみ袋の漏れも気になりませんし、泥靴で上がっても大丈夫だし、非常用階段にもなります。
プランニングの際には、一度思い切って「二階リビング」を考えてみてはいかがでしょうか。
岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。
「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。
著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。
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