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2012年11月9日
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天野彰のいい家いい家族

灯火親しむ候! 竹宵にゆらぐ灯を感じる

文と写真:天野彰

写真:多福寺の参道の花行灯(臼杵市の竹宵、写真筆者)拡大多福寺の参道の花行灯(臼杵市の竹宵、写真筆者)

写真:中庭の行灯(同上)拡大中庭の行灯(同上)

写真:細かい竹細工のオブジェ(同上)拡大細かい竹細工のオブジェ(同上)

写真:明るく目立ち過ぎる銀座・京橋の街灯(筆者撮影)拡大明るく目立ち過ぎる銀座・京橋の街灯(筆者撮影)

写真:震災の影響で灯が消えた銀座(11年3月、筆者撮影)拡大震災の影響で灯が消えた銀座(11年3月、筆者撮影)

 揺らぐ炎の灯(あか)りは人の頬を染め、その陰影は人の奥行きを感じさせるものです。この灯りこそが人類の繁栄のすべてだと私は思います。

 たきぎに始まった人類の歴史は、松明(たいまつ)さらにろうそくや灯明、そしてカンテラなど、火を焚いての灯りで夜の闇を照らしていました。発明の父エジソンは1879年、竹を焼いて作った炭素繊維からフィラメントを発見して電球をともして以来、私たちの生活は一挙に明るく便利になりました。長い夜は明るくなり、24時間活動できるようになりました。

 灯籠(とうろう)やせいぜいガス灯だった街も、街灯やネオンでさらに明るくなり、女性や子どもたちも夜中でも遊べるようになったのですが、それに伴って家族の離散や犯罪のリスクも増えました。今さら古代の生活に逆戻りはできませんが、電気をこうこうとつけて、夜が明る過ぎるのも問題です。時には電灯を消してろうそくの明かりや月夜の明かりを楽しむなど、暗さを楽しむ体験も必要ではないでしょうか。そう、「灯り」を楽しむのです。

 最近「竹宵」という催しが各地で行われていますが、なかでも有名な大分県臼杵市の竹宵に行ってきました。小京都と言われる古い街並みがすべて竹の行灯で飾られ、現代のネオンサインやLEDにはない、不思議な灯りの情景を目の当たりにして感動を覚えました。市の人口の倍ほどの人が訪れ、古都と竹の行灯が生み出す妙を堪能しました。

 町ぐるみの総力を挙げた企画もさることながら、洗練された竹宵の灯りの技に驚いたものです。かぐや姫をテーマとする竹筒の中の灯りは、もの悲しくすすり泣くような炎のゆらぎとともに、私たちを知らぬ間に古代の夜に引きずり込んでいきました。

 私はオイルショックで銀座の灯が消えた時を思い出していました。1973年秋、第四次中東戦争でアラブ諸国の原油が高騰し、政府が原油価格の引き上げ宣言をしたため、なんとトイレットペーパーが店頭から消えました。それを機に次々と物が無くなり、銀座の灯も消えて真っ暗になりました。高度成長の好景気がガタガタと音を立てて崩れ始めました。

 78年イラン政変による第2次オイルショックが終わるまでの5年間、苦渋の生活でした。特に高度成長の牽引していた建築業界は、材料高騰で現場は動かず、大幅な見積もり調整を強いられ、建築を断念する建主が続きました。

 近代化で電化も進み、暮らしが楽に、豊かになった矢先の出来事でした。冷暖房はもとより、給湯や床暖房まで電気やガスに頼った暮らしがいかに脆弱であったかを知りました。昨年の東日本大震災で起きた原発事故の関係で実施された計画停電で、再度銀座の灯が消えました。生活や経済のすべてが止まる危険が常にあることも私たちは改めて思い知らされました。

 私たちはあらゆるケースを想定して、高断熱ながら、大きく開放できる窓で住まいの風通しを良くするなど、自然に近い形で住む工夫をすべきです。特に照明はぜいたくなようですが、同じ部屋でもLEDや蛍光灯と白熱灯の二つの回路にしてスイッチを多くします。さらに調光機を付け、掃除や物を探すときには最大に明るくする一方で、ある時は白熱灯を調光で絞って落ち着いた温かい雰囲気を演出するなど、「あかり」を楽しみながら節電を心がけることができます。

 照明の明暗をコントロールするだけで生活にメリハリができ、家族の表情も明るく豊かになります。不思議なことに夫婦や家族のまとまりも良くなります。「灯り」こそがだんらんの中心なのです。

プロフィール

天野彰(あまの・あきら)

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。

著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。

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