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「暮らしと住まいを考える・主婦会議」を首都圏、東北、中部、関西、九州で開催した経験から、住んでいる地域によって住まいに対するニーズに違いがあることを実感した。ニーズには地域によらない「普遍的ニーズ」と「地域的ニーズ」があると前回書いたが、今回は私が実際に経験した「地域的ニーズ」について述べてみたい。
「主婦会議」とは、家庭生活のプロである主婦7名を選んで、生活体験を踏まえて住まいに対する意見やアイデアを出してもらう会議で、ほとんどの場合週1回ペースで1年間活動してもらう。7名の意見だけでは偏る可能性があるので、周辺の大勢の主婦に対してアンケートを実施し、その地域の最大公約数的な要望をつかむことも併せて行っている。大手ハウスメーカーや地元の工務店などと協力し、その地域の主婦のニーズを盛り込んだ生活提案型住宅(戸建て)を開発中の住宅団地の中に1棟建設し、一般公開して見学者から意見を集め、公開終了後は建売住宅として販売する。平均的ユーザーが購入できるよう、敷地は60坪から70坪(約200平方メートルから230平方メートル)、床面積は35坪から40坪(約115平方メートルから130平方メートル)が標準だ。
仙台市を中心としたエリアの主婦会議から出されたニーズは、「水仕事ができる土間を家の中に作りたい。」理由は、「家事の中で最も辛いのが、冬に漬物をつけること、寒風にさらされて白菜を洗う寒さといったら...。でも、我が家の味の漬物を喜んで食べる家族の顔を思い浮かべると止めるわけにはいかない。家の中で水仕事ができればとても楽になる。それに冬は洗濯物が乾かないからリビングに干していると主人が嫌がる。土間は室内物干し場としても使える」。アンケートの結果、何と83%の家庭で自家製漬物を漬けているとの結果が出た。他にも、玄関脇に家族全員のオーバー類を収納するウオークインクロゼットをつくったり、子供室から勉強机を排除して、共用の勉強部屋をつくったりするなどかなりユニークな提案住宅になった。
静岡では「フィットネス空間のある家」を提案した。サッカーで有名な土地柄だけあって、アウトドアも盛んで健康志向が強い。インナーガレージの上を浴室およびフィットネスルームにしたが、中2階に位置するので、1階からも2階からも行きやすいと好評だった。夫婦2寝室の提案も出されたが、その理由は「子供は1人1室なのに、大の大人が2人1室しかないのはおかしい。もっと夫婦の寝室のあり方を真剣に考えるべきだ。たまには一人でゆっくり寝たい時もある」ということであった。結局主寝室の中に、6畳の和空間と7.5畳の洋空間をとり、別々に寝てもいいし、1室を夫婦専用の趣味の空間としても使えるようにした。また、「この地域は、お雛様が盛んで女の子のいる家には必ずお雛様がある。その収納にどこの家も困っている」ということで、湿気のこない場所に容量たっぷりの収納を確保した。
首都圏では、「ホームパーティーのできる家」を提案。アイランド(島型)キッチンのある、広いリビング・ダイニングをつくり、主婦がキッチンにこもって汗だくになっておもてなしをするのではなく、お客様も気軽に料理や後片付けに参加できるカジュアルなパーティーができる暮らしを目指した。その分個室は狭くなるが、使用頻度の低い寝室はそれでよいというのが大方の意見であった。また、泊まり客のための多目的和室は、年に何回も使わないから無駄ということになり、結局和室のない家になった。ちなみに関東の主婦から出た「住まいに必要な3種の神器」は、「床暖房」「食洗機」「人造大理石のキッチンカウンター」だった。
関西の主婦たちは、高齢対策にこだわった。段差のない床は無論のこと、将来エレベーターを設置することも考慮に入れてそのスペースを確保し、当面納戸として使うことに。玄関と脱衣室には、座って靴の着脱、脱衣がよろめかずにできるようベンチが必要だし、夫婦の寝室も将来の介護に備えて続きで広めの2室がいるという主張だった。その代わりリビング・ダイニングは広くなくていいという割り切りもあった。また、寝間着のままでいる時、郵便物や宅配便を受け取るのに慌てて着替えなくてもいいように玄関脇に上げ下げ窓をつけて、いちいち外に出なくてすむよう配慮した。関西の主婦の3種の神器は、「床暖房」「浴室乾燥機」「食洗機」だった。
大分の主婦は、家族のコミュニケーションが緊密に図れるよう対面式キッチンと仕切りの一切ないパブリックスペースを提案。上下階も吹き抜け(1階は居間、2階はホームライブラリー)でつないだ。近所の人も気軽に寄ってお茶飲みができるよう玄関脇に土間を配置し、外に向かっても開かれた家にした。「家族ともご近所ともいいコミュニケーションをとってこそ豊かな暮らし」というのが、彼女たちの主張であった。また、家の中央・吹き抜け部分には大黒柱がなくては、というのも強い要望であった。大分の主婦たちの3種の神器は、「大黒柱」「浴室乾燥機」「ステンレスキッチン」だった。ステンレスキッチンが含まれるのは、メンテナンスが楽という理由からだった。
家事動線のスムーズさ、メンテナンスの容易さ、収納の確保など全国共通に挙げられる住みよい住まいの基本的要素のほかに、地域の気候風土や歴史的背景からくる生活習慣の違いなどを考慮に入れることも、住みよい住まいづくりには欠かせない視点である。
(03/04/10)
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