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打ち放しコンクリート仕上げの寝室 |
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シンプルな内観のワンルームマンション |
《デザイナーズマンション》というキャッチフレーズの不動産広告を最近よく見かけるようになった。デザイン性にすぐれたお洒落(しゃれ)なマンションという広告なのだろう。不動産用語として、デザイナーズマンションはいつのまにか市民権を得たようだ。とはいえ、この言葉はつい最近登場したばかりでまだまだ新しい。その実態はどうなっているのだろう。
デザイン性豊かな都市型賃貸マンションが、都会に暮らす高感度な若者向けの情報誌やファッション誌に数多く紹介されるようになったのは、1990年代の中頃からではなかったろうか。その記事が新鮮だったのは、賃貸マンションを設計した建築家も、ときに顔写真入りで必ず紹介されていたことだった。
その建築家たちの多くは、時代の感性を敏感に担う新進気鋭の建築家たちだったことが、よりいっそう新鮮味あふれる記事となっていた。一般情報誌の読者も、住まいへの関心度合いは別にして、住まい手であることに変わりはない。そうした都市型賃貸マンション、つまりはデザイナーズマンションが、マスメディアにのることによって、デザイン性豊かな住空間を提案する建築家と住まい手との距離が一気に近づいた感がある。
それが、「衣」、「食」に続いて、「住」のデザイナーズブランド化のはじまりだったように思う。バブル経済崩壊のショックもようやく薄れ、「量」より「質」、「多品種少量」時代と叫ばれていた頃のことだ。そして、アパレル、料理、美容、建築等々、各業界のカリスマ・クリエーターが、マスメディアにぞくぞくと登場し始めることになる。
ちなみに建築界のカリスマは、打ち放しコンクリートをファッショナブルな建築素材に変身させた安藤忠雄氏だろう。デザイナーズマンションといえば打ち放しコンクリート。そう言っても過言ではないほどに、打ち放しコンクリート仕上げはお洒落な建築デザインの代名詞になった。建築家の多くが好んで採用している。
普通の感覚からしたら、打ち放しコンクリート仕上げは、住まいというよりまるで倉庫や工場、あるいは仕上げ前の下地のままという印象が強い。それが、建築の外観はもちろん、内観の仕上げにも堂々と登場するようになる。その魅力は何だろう。まず素材として無垢(むく)、虚飾がない、そして野性味あふれて力強くシンプル。いずれにしろ、既成の住空間イメージを破壊するには、十分なパワーを持った素材である。建築家が好んで使う理由はそこにあるように思う。
いかに既成の住空間イメージを払拭(ふっしょく)し、いかに新しい住空間デザインを提案できるか、つまり現代都市に暮らす人たちが潜在的に求めている住空間モデルの提案こそが、建築家に課せられた究極のテーマである。そのテーマを実現しやすいビルディングタイプが賃貸マンションであり、その結果出現したのがデザイナーズマンションと考えていい。そして、それはマスメディアを介し、都会に暮らす高感度な若者たちにまずは受け入れられていく。その革新的なデザインの象徴が、打ち放しコンクリートだったといえよう。
そしていま、シンプルで真っ白な空間、床から天井までの大きな窓、吹き抜けと螺旋(らせん)階段、ガラスで仕切られたサニタリー、コンパクトキッチン等々、デザイナーズマンションを象徴するデザインヴォキャボラリーはどんどん進化し続けている。それらは、現代の多様な都市居住形態を可能にするために用意された建築デザインといっていいだろう。
でも、皮肉なことに、デザイナーズマンションであることをことさら強調し、広告している物件ほどデザイン性が乏しいように思えてならない。よくよく見てみると、表層的なデザインばかりが目に付き、どこが「デザイナーズ」なのだろうと首をかしげたくなる物件も結構多い。
さて、以上のことは実は賃貸マンションのことであって、同じ集合住宅でも分譲マンションとなるとずいぶん様相は異なってくる。分譲マンションに打ち放しコンクリートが採用されることはほとんどない。そこに賃貸マンションと分譲マンションとの違いが歴然と現れてくる。分譲マンションで、デザイナーズマンションを普及することは可能なのだろうか。そのあたりに、現代日本の住文化の本質が見え隠れしていそうな気がする。