高齢者が自宅を担保にして、老後の生活資金や借り換え住宅の資金、老人ホームの入居金にするなどの「リバースモーゲージ」がここに来て注目され始めた。高齢者が増えていることと、地価が下げ止まり始めたことなどから信託銀行や住宅メーカー、老人施設の運営会社がこの仕組みを使った商品を売り始めた。まだそれほど多くはないが、米国ではかなり普及しており、日本でも普及するのではないか、という見方が増えている。
この仕組みは年をとった人を対象に自宅を担保に金を貸して、死んだ時に処分して精算する。米国では1960年代に導入されて、10年で市場が拡大して8万件の契約が出来た。日本でも81年に東京都武蔵野市が最初に導入し、バブル期の地価の上昇を背景に東京都世田谷区や神戸市などの自治体や信託銀行が一斉に初めた。ところが、バブルがはじけて地価が下落したことで担保価値が下がりリスクが増えたことと、担保にした住宅の売買市場が発達していないことで利用者は少なかった。
ここにきて、地価が都市部で14年ぶりに上り始めたり資産を持った高齢者が増えたりしたことから、信託銀行などが新しい商品を売り始めた。中央三井信託銀行は今年8月から、今まで行っていたリバースモーゲージの対象に老人ホームの入居一時金も加えた。今までと同じ65〜79歳が対象で、担保の土地の評価額が5000万円以上なら評価額の50%を上限に貸し付ける。学費や介護費用の資金の貸付を対象にしていたのを広げた。
トヨタホームも04年4月から愛知県内の60歳以上の一戸建てに住む人を対象に土地の評価額の約50%、月30万円を限度に生活資金の援助として貸し付ける。
旭化成ホームズは比較的早い時期にリバースモーゲージの仕組みを研究して03年10月に日立キャピタルと共同開発した「住み替え型リバースモーゲージ」制度の取扱を始めている。旭化成ホームズの作る「へーベルハウス」が対象で持ち家は賃貸用物件になる。
この制度は住宅メーカーでは初めてだったが関係者の承諾を取ることが融資の条件になったために利用者は増えていない、という。
このほか、居酒屋チェーン・ワタミの子会社「アールの介護」は05年8月から老人ホームの入居金についてリバースモーゲージの仕組みを使った融資を始めた。入居後も自宅は残るので、正月やお盆は自宅で過ごすことができ、老人ホームになじめない場合は退去しやすい。
このように新しい制度が出来てきているが、米国と違って日本では相続の問題や中古住宅の流通市場が発達していないという問題もある。しかし、老人人口が増えるに連れてこの制度の利用者は増えていくだろう。