マンション市場は今後も順調に拡大を続けるかどうかの節目に差し掛かっている。ユーザーの購入意思そのものは今のところ大きな変化は見られないが、用地高騰や金利の先高観による駆け込み的な需要が一層促進される一方で、耐震強度偽装事件の余波で販売契約を結ぶまでの時間が長くなるなど、ユーザー心理が慎重になっているためだ。
マンション用地の高騰についてはこの項でも何度か指摘したように、一昨年の後半あたりから徐々に顕在化し、今は完全に路線価の3倍時代に突入したと言われている。近々、2006(平成18)年地価公示が国土交通省より発表されるが、ここでも地価上昇の広がりが裏付けられるはずだ。不動産投資のすそ野が広がる中で、東京圏のみならず、大都市圏では軒並み上昇地点が広がり、マンション、ファンド系などが入り乱れて用地の争奪戦が繰り広げられている。
また、住宅ローン金利については、日銀の量的金融緩和政策の解除決定を前に住宅金融公庫の基準金利が3月7日から3.41%に引き上げられ、1995年6月(3.60%)以来の高水準になっている。量的緩和といってもまだゼロ金利は維持されており、すぐさま大きな影響が出るわけではないが、住宅ローンも上昇基調にあることは確かだ。
一方、耐震強度偽装事件だが、再発防止に向けて国土交通省が検討を進めていた建築基準法と建築士法などの改正案の概要が固まり、3月中に今国会に提出する運びとなっている。骨子は偽装など耐震基準にかかわる重大な違反には懲役刑を新設するなど、罰則を大幅に強化したことだ。また、建築確認・検査体制の厳格化も盛り込まれた。構造計算書の偽装については新たに札幌市のマンションで明らかになるなど、更なる広がりを見せている。一連の偽装事件で特に問題なのは、住宅性能評価機関から住宅品質確保促進法に基づく性能評価書を交付された物件でも偽装が発覚したことである。いわば費用をかけた重要な判断基準が否定されたことであり、住宅性能表示制度のあり方そのものも再び問題視されてくるだろう。
いずれにしても、用地費の行方、金利の動向、耐震強度偽造問題の三つが当面のマンション市場を見通す上で大きな要因になることは間違いない。業界の一部には、各種の先高観で“特需”を期待する向きもあるが、かつてのようにこうした材料を並べて「今が買い時」というセールストークだけではユーザーは到底説得できないだろう。
マンション契約率を見ると、ユーザーの購入意欲は依然として高いと言えるが、耐震強度偽装事件を機にユーザーは居住性だけでなく耐震性の開示など品質を重視する姿勢を強めているだけに、業界全体には信頼回復のための更なる地道な努力が求められよう。それこそがマンション市場の成長戦略を持続させる唯一の道でもある。