団塊世代の第一陣が定年を迎える2007年が脚光を浴びている。
団塊世代は価値観が激変した戦後すぐに生まれ、数がまとまっているだけに、各年代においてそれまでの人たちの常識を覆してきた。
団塊世代が大人になってからだけを振り返ってみても、それまでとは違うさまざまなことが起こっている。1970年代前半に団塊世代の女性の78%、420万人が結婚したが、恋愛結婚65.1%、見合い結婚34.9%の割合で、それまでの結婚形態を逆転させた。
自由恋愛→結婚退職→専業主婦(サラリーマンの妻)が、団塊世代の「普通」であり、「家を建てるなら、大きな窓と小さなドアのある家、その庭には真っ赤なばらが咲き、坊やが遊んでいる。私のそばにはあなた」という歌の歌詞に象徴されるように、核家族が当たり前になってきた。
1972年のマンションの供給戸数は、年間10万9600戸で、はじめて10万戸を超えている。
新三種の神器「カラーテレビ」「カー」「クーラー」が普及したのもこの頃である。
この世代は、男女同権意識が強く「お友達夫婦」というそれまでになかった夫婦関係を作り出し、子供が生まれてからは「ニューファミリー」と呼ばれたお友達家族を形成。男女ともにジーンズを履き、ファッションのユニセックス化が進んだ。父親の威厳が急速に萎んでしまった時代でもあった。
パパは仕事に明け暮れモーレツサラリーマンとして、朝早くから夜遅くまで働いた。家に居る時間が少ないためにマイホームは完全に「主婦の城」となった。「男は仕事、女は家庭」という役割分担が徹底したのも、団塊世代の結婚から子育て期であった。
住宅購入の決定権が、夫から妻に移行したのもこの頃。パパは家に居ないから家のことはわからないし、「せっかく大金を支払うのにママに文句を言われてはかなわない、ママの好きにしたらいい」となったわけである。
首都圏では通勤時間1時間強の郊外型戸建て住宅団地がどんどん開発され、ニューファミリーで埋め尽くされた。私たちが考案した「対面式キッチン」が世に出て支持されたのもこの頃である。
団塊世帯が30代になると、子供にだんだん手がかからなくなり時間ができるようになる。その頃から「私の人生これでいいのかしら症候群」がはじまり、1983年の「妻たちの思秋期」はベストセラーになり、「金曜日の妻たちへ」が高視聴率をとった。「人生こんなものよ」と諦めていた上の世代の主婦たちとは全く違う感性と行動力を持っていたのである。
この年、「サラリーマン世帯の妻も半数が働きだすようになった」(国民生活白書)
同居20年以上の「熟年離婚」も増え、1970年の5000組から、1995年には3万2000組になっている。ここにもモノ言う妻、行動力のある元気な主婦像がある。
このような軌跡をたどってきた団塊世代が還暦を迎えたからといって、これまでの高齢者と同じように静かに老いを受け入れてこの先を歩んでいくとは到底考えられない。「何かしたい」「お役に立ちたい」「孤独にならない方法を見つけよう」という思いをバネに、社会に参加しつづけるはずである。
「群れて楽しく遊ぶ」が習い性になっている団塊の世代の高齢期は、かろうじてインターネットが自在に操れる年代でもあるので、ネットワーク力を駆使して「連帯する高齢者パワー」を発揮しそうである。
また、この世代は「自分で蓄えた財産は残すよりも自分たちで使う、豊かな老後を楽しむ」というアメリカ的ライフスタイル志向を持っているから、旅行、住まいの改善、スポーツ、グルメなどの消費を楽しむだろう。
日経ビジネスが定期購読者を対象に行った調査によると、団塊世代の定年時の予想金融資産は2000万〜5000万円という人が44%、5000万円以上という人が26%もいる。
住友信託銀行の調査部の試算によると、団塊の世代すべてが60代になる2010年には、団塊世代の預貯金総額は64兆〜74兆円。なかなかお金持ちの世代でもある。
子供たちも巣立ち、夫婦2人になり持ち家も築20年を越した。妻の城だったマイホームに夫が戻ってくる。夫の85%が定年後はゆっくりのんびり過ごしたいと定年を楽しみにしているのに対し、妻の40%は、夫が家庭に帰ってくる定年後を憂鬱と感じている。それは、我が城だったところを乗っ取られる不安であり、24時間ベースで顔を付き合わせて過ごす始めての経験への恐れであろう。
長い結婚生活の中で、子供のことに関する夫婦の会話はあったが、大人の人間として向き合ってこなかったツケが回ってくるのが定年後。どうコミュニケーションをとったらよいのか団塊男女ともに戸惑っている。
それに対する妙薬は、建て替えか住み替えかリフォームを決断すること。どんな住まいにするかを話し合うことで、今後の人生をどう過ごしたいかが明らかになってくる。お互いの暮らしに対する価値を再確認することができる。会話のなかった夫婦でも会話しなければ始まらない状況に追い込まれるのが「住まいづくり」。これを契機に、還暦後の、まだまだ遠い先の人生のゴールを設定し、その歩み方をプランニングするのも悪くないと思われる。
また、友人同士で住むコミュニティー型集合住宅へのニーズも団塊世代で高まりつつあるが、これについては長くなるので、次回にまわすことにする。