現在位置:asahi.com>住まい>住まいのお役立ちコラム> 記事 PR 注目マンション情報「200年住宅ビジョン」と美しい住まい…SI住宅の可能性2007年11月30日 染谷正弘 奈良の法隆寺が世界最古の木造建築だということはよく知られている。諸説はあるものの7世紀頃の建造だという。時代を越えたその建築の美しさもさることながら、木造で千数百年というその建築耐用年数にまず驚かされてしまう。腐りやすく燃えやすい「木」という建築素材にもかかわらず、その建設方法やメンテナンスによっては千年単位で建ち続けることが可能だということを、この建築はみごとに証明してくれている。
法隆寺が宗教建築だという特殊性は確かにあろう。でも、数百年前に建てられた木造の古民家が、いまもなお現役で住まい続けられている例は世界中にたくさんある。たとえば、日本では法隆寺とともに世界遺産に認定されている白川郷の合掌造りはよく知られていよう。 ヨーロッパには、ハーフティンバーと呼ばれる中世の木造建築でまるごとできている街もある。数百年の風雪に耐え、数世代に渡って住まい続けられてきた家々とその街並みは、実に味わい深く、息をのむほどに美しい。 千年、百年単位で、人に使われ住まわれ続けてきた建築には、ひとつの大きな特徴があるように思う。それは、建築としての堅牢さはもちろんだが、それ以上にそれら古民家はみな美しいということだ。建築として美しいからこそ何世代にも渡って人に愛され住まわれ続けてきたのではないだろうか。 人と自然が長い年月をかけ育み培った伝統の美しさもそこには確かにある。でも、それ以上に、それら古民家は建設されたその時から建築として美しい魅力にあふれていた、そう思えてならない。もう一度言えば、だからこそ、数百年も住まい継がれてきたのだ。 「美しい」という感覚、概念は、極めて個人的なもの、それを言い出すと議論にならないと言う人は多いだろう。確かに、建築デザインについて、言語や数値に置き換えることは難しいし、客観的評価もしにくい。でも、春の桜は美しい、秋の紅葉も美しい、富士山だって美しい、誰もが素直にそう感ずるはずだ。 つまり、美意識に客観性はある。建築にも、街並みみにも、そうした客観的な美しさは確かにある。美しい街並みを持つ古都の多くは、たくさんの人が訪れる観光地になっていることがその証だ。まずは、このことをきちんと認識すべきだろう。そして思うことは、現代日本の国政で欠けている最たるもののひとつが、住まいづくり、街づくりへの美意識ではないだろうか。 たとえば、自民党の住宅土地調査会(福田康夫会長)が今年5月に発表した「200年住宅ビジョン」である。いま、日本の住宅の平均耐用年数は約30年だという。そのデータは、世界的に見てもあまりにも短く、現代日本の「スクラップ・アンド・ビルド消費型社会」を象徴しているといっていい。だから、住宅が社会資産となるような「ストック型社会」へと大きく方向変換しようという住宅政策提案が、この「200年住宅ビジョン」だった。 一般的に日本の住宅のスケルトン(構造躯体)は約60年、インフィル(内装・設備)は約20年が平均的な耐用年数で、そのインフィルの寿命がスケルトンをも道連れにしている。それが、日本の住宅の寿命を短くしている主な要因だといわれている。住宅設備のめざましい技術革新が日本人のライフスタイルを激変させ、住宅をどんどん古いものにしてしまっていることもその要因に挙げられよう。 そこで、建築計画的には、スケルトンとインフィルを分離し、「超長期にわたって循環利用できる質の高い住宅」、いわゆるスケルトン・インフィル(SI)住宅の実現をめざそうというのがこの政策提案の骨子となっている。 その基本理念にあるのが、サスティナブル(持続可能)という思想だろう。建築資材やエネルギーを総合的に、再利用、循環させて、無駄な消費を無くし、恒久的に持続可能な居住環境の実現しようというものである。これからの日本の社会経済構造の行方、待ったなしの地球環境の現状を想えば、「200年住宅ビジョン」は、とても有意義な政策提案であることはいうまでもない。 地震や火事にも強く200年は耐えうるスケルトンを開発し、そしてインフィルをいつでも簡単に変換可能な建築システムも構築する、そのための税制や金融や流通の環境整備もしようという政策提案はとてもすばらしいと素直に思う。 でも、そのサスティナブルな居住環境を具現化するスケルトン・インフィル(SI)住宅のデザインイメージが見えてこない。そこでの生活シーンが少しも見えてこない。住宅政策提案というからには、そこが一番重要なポイントではないだろうか。 技術は手段でしかない。目的は、これからの日本の社会、家族のありようを見据えた居心地のよい住まいの実現だろう。そのためのスケルトン・インフィル(SI)住宅であり、その必須条件が、誰もが美しいと感ずる建築だと僕は思う。こんなにも素敵な居住空間だからこそ、何世代にも渡って住んでいけるし、住んでいたいと思わせるデザインイメージ提案こそいま求められてはいまいか。それが、ビジョンというものだろう。そこまで踏み込んださらなる住宅政策提案を是非期待したい。 |