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分譲マンションができるまで……最近の分譲マンション設計事情

2008年4月25日

  • 筆者 染谷正弘

写真メガマンション(約700戸)写真メガマンション(約860戸)

 僕は、住まいの設計をしている。分譲マンションや賃貸マンションなどの商品化された集合住宅が多い。ついこの間まで、日本人のだれもが自分の家は近所の大工さんに建ててもらっていたように思う。いつの間にか、私たちの住まいのほとんどが、ハウスメーカーやディベロッパーが大量に供給する商品化住宅になった。

 また、その一方で、集合住宅を「仮の住まい」でなく「終(つい)の棲家」と考える人が多くなっている。日本が少子化・高齢化社会に突入し、医療制度も変わり、もう誰もが自宅の畳の上で死を迎えられなくなったことが、その背景にあるように思う。

 そうした現代日本人の住まいへの意識の変化が、分譲マンションの大量供給をもたらし、特に首都圏で集合住宅は戸建住宅以上にいまやごく普通の住まいになった。子供に「お家の絵を描いてごらん」と言うと、四角い窓がたくさんある四角い建物、つまり集合住宅を描く子供が最近は多くなったという。

 マンションは、建築計画的には「集合住宅」、法的には「共同住宅」と呼ばれ、基本的に耐火建築物となるから、その構造は必然的にRC造や鉄骨造となる。そこで、僕たち建築家、一級建築設計士の登場となる。

 分譲マンションが出来るまでの流れを簡単に説明しておこう。分譲マンションを建設し販売するのがディベロッパー(不動産開発企業)である。まず、建設地を取得することから始まる。土地の売買を専門とする不動産業者から建設地を仕入れる場合が多い。その取得した建設地に、どのようなマンションを建設すべきかを構想、企画することを「商品企画」という。

 建設地エリアの歴史文化やその立地環境特性から、未来の住まい手になるだろう人たちの職業、年収、家族構成、世代、ライフスタイル等々が想定され、住戸規模や間取りタイプ、共用部など集合住宅としての機能構成(プログラム)は組み立てられる、それが商品企画である。こうして、商品としてのマンションのデザインの方向性や販売価格は決定されていく。

 その商品企画を具現化するのが建築設計だ。建築設計が進み、建築の全貌が見えてくると、広告代理店によって広告の企画、製作が始まる。広告担当は、新聞チラシやウェブなどを広告媒体にして、建設地エリアを中心に街やマンションの住まいとしての魅力を伝えていく。広告担当に課せられた一番の使命は、販売センターへの集客である。

 マンションのショールームとなる販売センターには、マンションライフを実感できるようなモデルルームをはじめ様々なディスプレーが仕掛けられていて、最近はさながらテーマパークのようで結構楽しい。そこに販売員がいて、マンション購入のための様々な相談に乗ってくれて商談へと進む。ここでようやく実際の住まい手の顔が見えてくる。

 一般的には建築確認申請がおりると同時に販売センターがオープンし、建築工事も始まる。分譲マンションの一番の商品特性は、建築が竣工する前に、実物を見ないままに売買契約が締結されることにあろう。それをマンションの「青田売り」と呼んでいる。

 さて、建築設計だが、建築企画、基本設計、実施設計、施工監理と、設計業務もいくつかの段階を経て進む。建設地の立地特性や法的条件に基づき、マンション事業が成立する建築ボリュームと骨格を決定するのが建築企画である。

 基本設計は、商品企画と直結していて、建築ボリュームに「住まいの魂」を入れるデザイン作業が徹底しておこなわれ、住まいとしてのマンションはこの段階で初めてその全貌を現す。実施設計は、施工会社に建築内容を伝達するための詳細設計であり、施工監理は設計図通り施工されているかを監理する業務となる。

 僕が住まいづくりの仕事として携わる分譲マンションは、「メガマンション」と呼ばれる大規模マンションが多い。そこで僕は、通常の設計業務とは違った役割を担っている。それは、ディベロッパー側に立っての商品企画、さらにそのマンションの住まいとしての魅力を広告につなぐ業務であり、しいて言えばプロジェクト全体の総合監修ということになろうか。

 具体的には、建築プログラム(マンションの機能構成)の構築、建築デザイン監修、広告デザイン監修、さらに販売センターのデザインや展示計画、モデルルームのデザイン監修までを一貫しておこなう。設計業務的に言えば、専有部間取り開発、外観やエントランス廻りの共用部の基本デザインなどの基本設計の一翼を担う。実際の設計者は、もちろん他にいる。メガマンションの場合、大手ゼネコンの設計施工が多い。

 僕の役割は、端的にいえば「売れるマンション」づくりである。こういう言い方をすると、多少語弊があるかもしれない。でも、「売れる」ということは、社会に「必要とされている」ことだと僕は考えている。マンション購入者となる住まい手の目はとても厳しい。だからこそ、いまを生きる私たちはどんな住まいを求めているのか、現代日本社会の住まいはどうあるべきか、僕は真剣に住まいについて考え、「分譲マンション」という住まいづくりに取り組んでいる。ただ、その住まいづくりの根底にあるのは、常に「今という時代の美意識」である。このことは強く主張しておきたい。

 こうした僕の住まいづくりの取り組み方は、もはや既成の設計業務領域を超えているように思う。でも、その結果、このコラムでも何度か紹介している「コミュニティー・デザイン」という計画概念も生まれた。次回も引き続き、最近の分譲マンションの設計事情について考えてみたい。

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