2008年5月16日
都市再生機構(UR 小野邦久理事長)は耐震基準に合わない9都道府県17団地にある24棟(1950戸)の賃貸集合住宅を2年以内に解体する。この方針に対して住んでいる人の中からは「住み慣れたところなので動きたくない。急に言われても困る」などの反発が出ている。URとしては別な団地に移ってもらうように説得しているが交渉は難航しそうである。しかし、震度7程度で倒壊する恐れがあるために解体する方針は変えないという。
URは05年11月に発覚した耐震偽装事件をきっかけに調査を始めた。1981年の建築基準法改正以前に立てられた約1万2700棟のうち約2100棟が基準を満たしていないことが分かった。350棟は補修工事などをしてそのまま住めるようにしたが、24棟は補修工事をしても引き続き住むことは難しいので解体することにした。
解体する中には東京日野市の高幡台団地などが含まれている。こうした団地に住む人は高齢者が多いため、出てもらうことには不満は多い。URとしては説明会を丁寧にするとともに別な賃貸住宅を紹介する。稗田昭人カスタマーコミュニケーション室長は「耐震の問題は急を要することであり、ほかに住むところを紹介して理解してもらっている。URのホームページでも機構住宅における耐震安全性確保の取り組みについてとか、賃貸住宅のストック再生・再編方針などについて説明をしています。なるべく時間をかけて説得していきます」と話している。
URの賃貸住宅だけでなく、民間のマンション約600万戸(08年4月現在)のうち、建築基準法改正以前に建てられた30年を越すものが80万戸ある。こうしたマンションをどのように再生していくかは不動産業界も関心を持ってきている。
業界大手の野村不動産はマンションの建替え事業に本格的に参入する。2〜3年以内に販売が好調な都心のマンション9物件(2400戸)の建て替えに着手する。30〜40年経った古いマンションが対象であり、敷地容積を有効活用し、今までの物件よりも戸数を増やして上乗せ分を一般の客に売却する。第1弾として、東京・新宿の新宿御苑のそばの40年経った地上7階建てのマンション(69戸)の建て替えをする。容積率を最大に生かして93戸のマンションにし、出ていく人もあるので、野村不動産の持ち分は34戸になる。2010年夏に完成する。こうした事業は旭化成ホームズや三菱地所も既に手がけている。
こうしたやり方のほかにファンドを使って老朽化したマンションを再生したらどうか、という提案を、米山秀隆・富士通総研経済研究所主任研究員が5月2日付の日経新聞でしている。それによるとファンドが古いマンションの区分所有者から物件を買い取り、分譲マンションをリノベーション(中古物件の改装)して賃貸マンションとして再生する。この賃貸マンションから高い賃料がえられれば不動産投資信託(J−REIT)に組み入れることも出来る、という。ファンドや区分所有者だけでなくマンションを再生することで環境問題にもよいことになる、という。解体すると廃棄物が出るが、再生することでそれがない。米山研究員は、こうしたファンドなどにURが出資することを検討すべきだと提案している。老朽化したマンションや住宅の再生は耐震問題からも待ったなしである。