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とうとうリビングにテレビを買った。テレビなし生活に耐えられなかった一番の張本人は虎キチの夫だった |
親の厚意を無にする娘。母が私に与えたうれしくない称号だ。不本意ながら、その通りだと思う。この日も、母が田舎から車で運んできた3リットル入りの醤油を、「悪いけど」と言って、持って帰ってもらった。
幅80センチ、縦240センチの細長いキッチンで、食品のストック場所は、流し台の下か、無印良品で買った細長い棚しかない。そこからあふれるものは持たないと、ここに越してきたときから決めている。
「そんなかたくなにならなくても、どこかにしまえるでしょう」
と、母は言う。
押し入れや別の部屋の収納棚に入らないことはないが、本来収納すべきものと違うカテゴリーのものを入れると、記憶が薄れ、賞味期限が過ぎたころに思い出したりする。
現に、そんなふうにして私は醤油やのり、高野豆腐やだし昆布など、実家からもらったいくつもの食品を無駄にしている。無駄にするくらいなら、おいしいうちに使ってもらえる家庭に返したほうがいいと思っている。1度や2度なら厚意をありがたく受けて、ご近所さんに配るのもよいだろうが、親とのつき合いはこの先も続く。都会の狭小住宅で、食品をストックすることがいかに困難であるかは、非情なようだが、きっちりわかってもらったほうがよいと思っている。結果的に、そのほうが厚意を無にしないですむのだから。
「あのね、大きな食品のストックは、あえて買わないことにしているの。狭いから」
「あんたも働いていて大変だし、醤油はいくらあってもいいと思ったから、大きなの持ってきたんだよ」
「でも、うちは短い期間に使い切れる小さなものでいいの。スーパーやコンビニに、ストックを置かせてもらっているという意識なの。コンビニは、うちの倉庫くらいの意識」
「……ふーん」
母は、半ばあきらめたように、ちょっと悲しそうに醤油を受け取る。そこまで言わなくても、と自分でも思うがしかたない。収納スペースにもローンがかかっている。ここで方針を明確にしておかないと、缶詰やら贈答のせっけんセットやらタオルやら果実やら野菜やらが、とんでもない分量で送られてくるのだ。
だが、ストックを全くしていないかと言えばそうでもない。避難用は専用スペースがあるので多めに用意。それから、子どもの文房具、医療品(絆創膏などすぐになくなるもの)だけは、必ず買うときに二つずつ買うことにしている。子どもの国語ノートや図工のノリなどコンビニに売っていないもの、だが、切らすとすぐに補充が必要なものは、二つ買っておいて損はない。近所に文房具屋がないので「二つ買い」は必須だ。(町の唯一の文房具店が一昨年に閉店。電車に乗って渋谷まで行かないと、専門店がない。なんと寂しいことか!)
家で使うはさみや油性マジックがない、というときも二つ買う。必ず使うものだし、なぜか紛失しやすいものでもある。もちろんちゃんと探すが、「ないない」と探している間にも必要だったりするので二つ。本当に不思議なのだけれど、家のはさみというのは一時的に紛失しやすい。
ストックすべきもの、そうでないもの。常日頃から、そのへんを白黒ハッキリさせておかないと物だらけになってしまう。
「じゃあ、持って帰るわ」としょげる母に、ごめんねと心の中でそっとわびる。狭いところに住むと、少し親不孝者になる。
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