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「小さな家の生活日記」

家を建てるときは体に気を付けて

2007年04月02日

 友だちが中古の家を買った。

写真最近伺ったお宅のガレージと庭。土だけだったのを、自分たちで手を入れここまで個性的な大人の空間に仕上げたのは見事!

 安く買って、建築家にリフォームをしてもらうそうだ。今は設計中とのことで、いちばん楽しい時期だねというと、彼女は顔を曇らせる。

 「忙しくて、全然、手が回らないのよ」

 本当はじっくりと建築家と話し合ったり、アイデアを出し合ったり、調べたりしたいのだそうだが、共働きで、日々の仕事に追われ、その時間がないと嘆く。私もそうだったな、と6年前を思い出した。

 コーポラティブハウスを設計中は、ちょうど第2子がおなかにいた。上の子もまだ手のかかるときで、仕事は出産の直前までしていた。設計のためにしなければならないことは山のようにあって、育児や家事や仕事を片づけ、ほっと一息を付く23時ごろから、夫と作業をしたものだ。好きな家の写真を雑誌から切り抜いて、建築家に見せるためにファイリングしたり、建具やドアノブなどのパーツのカタログを取り寄せて比べたり、システムキッチンの絵コンテを描いてみたり。夜が更けるのも忘れて没頭した。そしていつも寝るのが午前2時、3時に。

 出産後まもなくが設計の締め切り日で、産後も夫とああでもない、こうでもないと夜、話していたら、とうとうある日、熱が出てしまった。産後1カ月は、平常の体に戻りきっていないのに、睡眠時間を削って無理をしたからだ。

 ある建築家は、

 「家を建てるときに、体調を崩す施主の奥さんは少なくない」

と、言っていた。とくに共働きの女性のほうが、膀胱(ぼうこう)炎や腎盂(じんう)炎になりやすいらしい。どちらも、疲労が要因のひとつとなる婦人病である。つい、あれこれ頑張りすぎて、ダウンしてしまうのだという。家の建設は納期があり、設計もそこから逆算して、限られた日数のなかでこなさなければならない。なまじ楽しい作業なだけに、疲労がたまっているのに気づかず没頭してしまうのだろう。とくに、働きながら、あるいは子育てに追われながらだと、圧倒的に設計にさける時間が少ない。すべて建築家におまかせの人ならいいが、こだわりがある人ほど、しんどくなる。家を建てるということは、楽しいけれど膨大な手間暇がかかるものなのだ。

 ショールームにもいかなきゃ、これも調べておかなくちゃと気持ちばかりが焦っている友だちに忠告した。

 「無理すると体にくるから、設計時ほど余裕をもって体を大切にね」

 建築家とはもちろんであるが、家を建てるときは夫とも本当によく話した。睡眠時間はたしかに少なかったが、そのときに作った家ノートは、よい思い出になっている。書かれたほとんどのメモは、予算が足りないために夢で終わってしまったが、夢の跡をたどると、あのときの等身大の自分たちが見えてくるのでおもしろい。そして、夫が私の仕事部屋のために自分の書斎をあきらめたり、彼の喫煙のために換気扇のランクをあげたり。少ない予算だからこそ、譲ったり譲られたりがあって、互いに折れることを覚える。

 間どりや設備のあれもこれもの前に、まずは話し合いの時間を上手に確保したいもの。

 そうだ、今度、友だちに会ったら、ちょっとキザだけど、こう言ってあげようか。

 「彼といっぱい話しておくといいよ。そうやって話した時間が、夫婦やそれからの生活の基礎になるから」

プロフィール

顔写真 大平 一枝(おおだいら・かずえ)

 長野県生まれ。女性誌や文芸誌、新聞等に、インテリア、独自のライフスタイルを持つ人物ルポを中心に執筆。夫、11歳、7歳の4人家族。

 著書に、『見えなくても、きこえなくても。〜光と音をもたない妻と育んだ絆』(主婦と生活社)、『ジャンク・スタイル』(平凡社)、『世界でたったひとつのわが家』(講談社)『自分たちでマンションを建ててみた。〜下北沢コーポラティブハウス物語〜』(河出書房新社)、など。【編集または文の一部を担当したもの】『白洲正子の旅』『藤城清治の世界』『昔きものを買いに行く』(以上「別冊太陽」)、『lovehome』『loving children』(主婦と生活社)、『ラ・ヴァ・パピヨン』(講談社)。最新刊は、紙と人の心の絆を描いた「かみさま」(ポプラ社)。

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