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「小さな家の生活日記」

「俺の場所」

2007年07月23日

 6年生の息子は、受験生なので夜遅くまで勉強をする。2年の妹が同じ部屋だと、机の電灯がまぶしく寝られないので、やむなく、去年から私の仕事場に息子の机を置いている。 来年はなんとかしなければならないが、当面は親の仕事部屋に間借りするという変則的な子ども部屋でしのいでいる。

写真2畳の聖域
写真作りつけ収納に助けられ、広さを確保。昭和の和洋折衷なこの感じが好きだ

 仕事場は洋間で、12畳ほどある。作りつけの本棚があるので、収納家具が不要で、わりに広い。一角には夫の事務机もある。

 「勉強部屋が母親の部屋と同じだ」なんて(ベッドは子ども部屋にあるが)、欧米人が聞いたら、あきれるに違いない。いったいいつ、子どもは自立するの?と。

 さて、急場しのぎの勉強部屋に移って1年4カ月の経過をまとめてみよう。

 私はふだん、取材や打ち合わせ以外は家で書いているが、9時から6時まででいったん、執筆はうち切る。6時からは母親モードに切り替えねばならないからだ。締め切りが立て込んだときは、子どもが寝たあとに書き出す。添い寝が習慣だった保育園時代は、子どもと一緒に寝て、朝3時か4時に起きて書くのがつねだった。仕事のスタイルを、子どもの成長に合わせて変えるのは、多少めんどうなこともあるが、それ以上にオンとオフのメリハリがついて集中できるのでありがたい。

 話がそれた。勉強部屋である。実質、私が仕事をしている昼間は、息子はいないので、問題がない。夜遅くまで勉強をしていて、私も締め切りが立てこみ机に向かわなければならない日が問題だ。

 なにしろ私が横にいるので(机は離れている。位置も目線は合わない)、すぐ、質問をして辞書を引こうとしない。私のパソコンのパチパチという音がうるさいと言う。なにより、プライバシーが気になるようで、ある日、「カーテンで仕切って部屋らしくしてくれ」と言い出した。

 年頃の息子のこと、それは当然の要求だと思った。しかし、一つの部屋で彼の机のコーナーには窓が二面ある。カーテンで仕切るとわたしの方に光が入ってこなくなるので、考えた末、オーガンジーの透けるカーテンで仕切った。少しでも自分の部屋らしさを出すため、2畳ほどの彼のコーナーにだけジュータンを敷いた。カーテンの向こうには私は一切はいらない。掃除もしない。

 透けるのだから、プライバシーも何もあったものではないが、彼は想像以上に満足して、今は勉強(やマンガ)に集中している。あいかわらず、私のパソコンのパチパチは聞こえるのであるが、何もいわない。そんなふうにして数カ月、今のところ、うまくやっている。

 子ども部屋というのは、以前から我が家の課題で、「男と女だし、そのうちわけて確保しなければ」と話していた。机、ベッド、エアコンはなくとも窓はいる。洋服をしまうボックスも必要だね。そんな話をしていた。

 だが、この急場しのぎの勉強部屋を見て思う。子どもは広さとか明るさとかではなく、俺の場所、と言える空間が欲しいのだ。それがたとえ机ひとつでもいい。だれも踏み込まない俺の場所、オフィシャルではない自分だけのスペースがあればいいのだ。

 声が変わりをするころには、そうもいってられないだろうが、当面はこれでいける。すけすけカーテンの俺の場所。綿ぼこりが積もって大変なことになっているが、ぎりぎりどうしようもなくなったら、もそもそと夜中に片づけをしている。

 子ども部屋はこうあるべきという正解はない。家族ごとに、成長、ライフスタイルに合わせてどんどん変えていけばよい。子ども部屋に限らず、ひとつの部屋が、ふすま1枚で茶の間になったり寝室になったりする、かつての田の字型の日本の家のように、住まいは融通無碍(ゆうずうむげ)でありたいと思う。

プロフィール

顔写真 大平 一枝(おおだいら・かずえ)

 長野県生まれ。女性誌や文芸誌、新聞等に、インテリア、独自のライフスタイルを持つ人物ルポを中心に執筆。夫、11歳、7歳の4人家族。

 著書に、『見えなくても、きこえなくても。〜光と音をもたない妻と育んだ絆』(主婦と生活社)、『ジャンク・スタイル』(平凡社)、『世界でたったひとつのわが家』(講談社)『自分たちでマンションを建ててみた。〜下北沢コーポラティブハウス物語〜』(河出書房新社)、など。【編集または文の一部を担当したもの】『白洲正子の旅』『藤城清治の世界』『昔きものを買いに行く』(以上「別冊太陽」)、『lovehome』『loving children』(主婦と生活社)、『ラ・ヴァ・パピヨン』(講談社)。最新刊は、紙と人の心の絆を描いた「かみさま」(ポプラ社)。

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