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「小さな家の生活日記」

理想の冷蔵庫

2007年07月30日

 長野の両親が車で上京。

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いもの道具 みちくさ 「かざりあそび」展に行きました。場所は、麻布十番の古道具店high-kyo(ハイキョ)。ここは、古いものを偉そうに置いていない、ちょっとほっとするお店で、以前から好きなスペースです

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鋳物のピッチャー(花入れ、右)を買いました。さて、どんな花を生けましょう

 また、いつものように、野菜やジュースやお菓子や果物を山のようにもってきてくれた。せっせとありがたい食料品を冷蔵庫に詰めていると、開口一番、母はおきまりの言葉をつぶやいた。

 「この家の冷蔵は小さいからねえ」

 一番下が冷凍庫、野菜室、冷蔵室とふつうの3ドアのファミリーサイズである。家族4人で使い回すのにそれほど困らない大きさだ。今日のように、大量の食料品や保存品がどっとくると、たしかに満杯になって雪崩を起こしそうにはなるが、ふだんはなんとかなっている。

 実家は、近くに大きなスーパーがなく、週に1度、車で出かけてまとめ買いをする習慣がついている。その基準で行くと、うちの冷蔵庫はどうしようもなく小さいのだ。

 母はもう何十年もそういう生活なので、ちょこちょこと自転車で近所に買いに行ける下町の生活や(下北沢は世田谷の偉大なる下町である!)、1週分を見越して生協でまかなう共働きの生活の、冷蔵庫の収蔵量というものがわからないのだろう。そういう意味では、実家の食料調達法は、どちらかというとアメリカの郊外型に近い。車で乗り付け、大型スーパーで大量に買い込む。両親は二人暮らしだが、巨大な5ドアの冷蔵庫と、外にも2ドアのビール・漬け物専用冷蔵をもっている。

 江戸時代に習えとはいわないが、つい3代前くらいまで、冷蔵庫を持たずに健康に暮らしてきた民族が、そこまで大量になんでもかんでも冷やし、ストックする必要があるだろうか。

 あれば便利だが、なくても暮らしていけるのでは。いや、そこまでは言い過ぎとしても、必要最低限の大きさでシアワセに食わしていけるのではないかと思う。

 私が憧れるのは、杉並に住む友だち夫婦の家の冷蔵庫だ。二人暮らしで、胸の高さくらいまでしかない、独身用の小さな2ドアの冷蔵庫を使っている。いつのぞいても、庫内がピカピカ清潔で、2人分の新鮮な野菜や肉が、きれいに並んでいる。一度見渡すだけで、すみずみまで何がどれだけあるか瞬時に把握できる。死角がない冷蔵庫というのは使いやすそうだなあと思う。

 情けないが、母が「小さい」と嘆く我が家の冷蔵庫でさえ、死角だらけで、得体の知れない姿を変えた野菜が隅によく転がっている。友だちの冷蔵庫にはそれがない。

 1〜2日食べきれる量だけしか買わない。彼女は働いているが、仕事帰りに鮮魚店で、今晩食べる魚を選び、豆腐店で明朝食べる豆腐を買う。だからいつだって新鮮でおいしい。野菜もできるだけ袋詰めではなく、1個売りのものを買う。ジュースもビールも2〜3日で飲みきれる量を。そうやってもう15年近くもこれ1台ですませているというのだから驚く。しかも、彼女は料理好きの料理上手だ。

 大きいことはいいことだと高度経済成長期にあおられて過ごした世代の違いや、歩いていける距離に商店がある・ないなど地域性、環境の違いは大きい。

 ただ、大きなほうが便利に決まっているという思いこみの枠だけは外したい。食べきれる量だけを収納するというシンプルだが、いちばんむずかしいことを淡々と実践している友だち夫婦の冷蔵庫を見ると、その潔いまでの小ささにあらためて感動する。

 たぶん、その家ででるごみの量も我が家やうちの実家とは違うだろう。家族の人数ではない。つきつめていうと、ものを大事にする心のものさしが違うのだ、きっと。

プロフィール

顔写真 大平 一枝(おおだいら・かずえ)

 長野県生まれ。女性誌や文芸誌、新聞等に、インテリア、独自のライフスタイルを持つ人物ルポを中心に執筆。夫、11歳、7歳の4人家族。

 著書に、『見えなくても、きこえなくても。〜光と音をもたない妻と育んだ絆』(主婦と生活社)、『ジャンク・スタイル』(平凡社)、『世界でたったひとつのわが家』(講談社)『自分たちでマンションを建ててみた。〜下北沢コーポラティブハウス物語〜』(河出書房新社)、『かみさま』(ポプラ社)など。【編集または文の一部を担当したもの】『白洲正子の旅』『藤城清治の世界』『昔きものを買いに行く』(以上「別冊太陽」)、『lovehome』『loving children』(主婦と生活社)、『ラ・ヴァ・パピヨン』(講談社)。最新刊は、『センス・オブ・ジャンク・スタイル』(風土社)。

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