現在位置:asahi.com>住まい>小さな家の生活日記> 記事

PR 住まいの最新情報

「小さな家の生活日記」

ジャパニーズ・ジャンク・スタイル

2007年09月03日

 昨年から、古い家に手を入れ、自分流に暮らしている人の家を訪ね歩いている。「ジャンク・スタイルシリーズ」という著書の執筆のためだ(1冊目は7月に既刊)。

写真

  

写真

画像は2点とも『スピリッツ・オブ・ジャンク・スタイル』(風土社/10月5日発売予定)より

 ジャンク・スタイルとは、もともとイギリスのスタイリストが90年代の終わりに提唱しはじめたインテリア様式の一つである。

 そもそも、世界貿易機関(WTO)では、製造から100年たつものをアンティークと定めている。それ未満のものは中古、古道具、ユーズド、ジャンクなどさまざまな呼称がある。

 ジャンク・スタイルは、ブランドやビンテージ、出自や年代や由緒という記号に振り回されず、自分の審美眼だけをたよりに、使い古されたものを愛し、暮らしにとりいれている人たちのライフスタイルを指す。

 5軒、10軒と、ジャンクな家の取材を重ねていくうちに、私はこれはたんなる様式の一つではないと思うようになった。これは生き方の思想だ。

 くぎ一本、器一客、いす一脚。

 どの時代の、どんな国の、誰が作ったものかは関係ない。ものと自分の間にある物語こそがすべて。自分が美しいと思えば、それでいい。

 壊れたなら直す。気に入るものがなかったら自分でつくる。なにかで代用する。見向きもされない廃品に新たな命をふきこみ、めでる。足りなければ「足りない」なりにくふうをする。買い足さない。

 つまり、ものさしは自分。

 そういう「足るを知る暮らし」を実践する人々は、自由で開放的で、発想がしなやかだ。コーヒーの空き瓶を照明の傘にしたり、自分で砂壁を、珪藻土(けいそうど)や漆喰(しっくい)に塗り替えたり、捨てられていた茶箱をくりぬいて愛犬の家にする。自由で遊び心たっぷりの志向のその先には、たくさん作ってたくさん消費する社会へのしなやかな反骨が垣間見える。

 ファッションや流行の一つとして、欧米で広まっているジャンク・スタイルとはどこかひと味違う。日本のそれは、もっと深いエコシックな精神性をまとっている。

 そして、私は再び気づいた。これは、決して新しい様式などではない。「もったいない」を大事にする先人たちが築いた価値観。私たち日本人が、先祖から受け継ぎ、累々と実践してきた暮らしかた。

 日本にはつつましやかで、だけど創造的な発想で、ものと上手につき合ってきた歴史がある。今、若者が、古いビルをリノベーションして住まいにしたり、活版印刷や古本などに興味を示すのも、そういう美しい精神性が底流に流れるがゆえの、自然の流れではないだろうか。

 ジャンク・スタイルもまた、日本人が原点に回帰しようとしている流れの一環なのかもしれない。

 日本には日本の美しいジャンク・スタイルがあり、シンプルで潔く、無駄のないこの暮らしのそれぞれに、今、私たちが求めるひとつの答えが潜んでいる気がする。

    ◇

【ジャパニーズ・ジャンク・スタイル展】〜住まいから生き方が見える〜

http://www.fudosha.com/publication/book/sence_of_junk_stlye/sence_of_junk_style.html#event

9月14〜16日開催

場所:ハコギャラリー(東京都渋谷区西原3−1−4)

プロフィール

顔写真 大平 一枝(おおだいら・かずえ)

 長野県生まれ。女性誌や文芸誌、新聞等に、インテリア、独自のライフスタイルを持つ人物ルポを中心に執筆。夫、11歳、7歳の4人家族。

 著書に、『見えなくても、きこえなくても。〜光と音をもたない妻と育んだ絆』(主婦と生活社)、『ジャンク・スタイル』(平凡社)、『世界でたったひとつのわが家』(講談社)『自分たちでマンションを建ててみた。〜下北沢コーポラティブハウス物語〜』(河出書房新社)、『かみさま』(ポプラ社)など。【編集または文の一部を担当したもの】『白洲正子の旅』『藤城清治の世界』『昔きものを買いに行く』(以上「別冊太陽」)、『lovehome』『loving children』(主婦と生活社)、『ラ・ヴァ・パピヨン』(講談社)。最新刊は、『センス・オブ・ジャンク・スタイル』(風土社)。

 ホームぺージ「暮らしの柄」 http://www.kurashi-no-gara.com/別ウインドウで開きます


小さな家の生活日記 バックナンバー

バックナンバー

このページのトップに戻る