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「小さな家の生活日記」

不器用な親の“つくる生活”

2007年10月01日

 リフォームに凝っている人が、興味深い話を教えてくれた。壁紙を貼るのを、子どもに手伝わせたら、それまで汚れた手で平気でぺたぺた触っていたのに、いっさい汚さなくなったというのだ。家づくりにほんの少しでも関わると、たとえ子どもでも愛着が増すのだろう。汚すな、壊すなと叱るより、家の補修を一度でも手伝わせる方が、ずっとよい躾(しつけ)になるのかもしれない。

写真

知人の粋なぐいのみの収納法。曲げわっぱにてぬぐいを敷いて。客人は好きなひとつを選ぶ。

 とはいえ、わが家は夫も私も日曜大工が不得手で、あまりなにかを直したり、つくりだす後ろ姿を子ども達に見せていない。子どもの椅子やおもちゃなど、ちょっとした木工細工ができる親だったら、さぞかしかっこいいだろうなあと思う。

 でも、できないものはできないので、わりきって、それぞれ自分の出来る範囲で、自分の好きなささやかなものをつくっている。

 私は今年は、味噌と梅干しと梅ジュースと木瓜(ぼけ)の実酒を漬けた。別に子どもの躾のためにやっているのではなく、好きでトライしているだけだが、子ども達は私が我を忘れて夢中になって糀(こうじ)の玉を投げつける姿(空気を抜くため)をじっとおもしろそうに見ていた。そうして、大豆が味噌になる工程をなんとなく知る。それだけで十分である。

 夫は今夏、きゅうりとトマトのネットを張り、小さな小さなプランター菜園をつくった。

 どれをとっても、とるにたらぬものだが、今の子は、ビックリするくらいいろんなものができあがるまでの「過程」を知らないので、これでもやらないよりはましだろうと思っている。 

 大人が我を忘れてなにかをつくるのに熱中している姿をみせるのもまた、いいことだ。大人が真剣に格闘した末にできあがったものを、子どもも大事にするようになる。げんに息子は、今年突然、梅干し好きになり、毎日、大事に1粒ずつ食べている。(彼が梅干し好きになるとは思わなかったので、漬けた量が少ないのだ)土鍋に白米と梅干しを入れて炊くことがあるのだが、「3個入れたら減っちゃうから2個にして」と個数まで制限するしまつ。梅の実を洗い、干し、塩に漬けて待つ過程をみていなかったら、はたしてどうだったかなと思う。

 息子は11歳。進学のため、自分が実家をでたのが18歳だったのを思うと、あと一緒にいられるのはたった7年という計算になる。その短い時間にどれだけのことを教え、伝えられるのか、自問自答をしている──。

プロフィール

顔写真 大平 一枝(おおだいら・かずえ)

 長野県生まれ。女性誌や文芸誌、新聞等に、インテリア、独自のライフスタイルを持つ人物ルポを中心に執筆。夫、11歳、7歳の4人家族。

 著書に、『見えなくても、きこえなくても。〜光と音をもたない妻と育んだ絆』(主婦と生活社)、『ジャンク・スタイル』(平凡社)、『世界でたったひとつのわが家』(講談社)『自分たちでマンションを建ててみた。〜下北沢コーポラティブハウス物語〜』(河出書房新社)、『かみさま』(ポプラ社)など。【編集または文の一部を担当したもの】『白洲正子の旅』『藤城清治の世界』『昔きものを買いに行く』(以上「別冊太陽」)、『lovehome』『loving children』(主婦と生活社)、『ラ・ヴァ・パピヨン』(講談社)。最新刊は、『センス・オブ・ジャンク・スタイル』(風土社)。

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