2008年4月7日
デザイナーズホテルの草分け、小淵沢リゾナーレに宿泊。デザインはマリオ・ペリーニ。ホテルもまた「個性化」の時代。
ニューヨークで育った日本人青年の話を聞いた。
「母が和食オンリーの人で、子ども時代、学校におにぎりを持って行くと猫のごはんだとバカにされた。でも、その友達を家に招いて和食を出すと、驚いて尊敬の目に変わる。普段からおまえのうちは、こんなに品数が多いのか?、野菜が多いのか?と。向こうはピザや肉などワンプレートが多いので」
以来、彼は初めてつきあう友だちは、つとめて家に招くようになった。日本で社会人になってからも、初対面の仕事相手はホームパーティーに招いて、お互いにうちとけたあと仕事にかかることが多いという。
「たくさんの言葉で自分のことを説明をするより、1回家に呼んだ方が早い。住まいや食事を見れば、おおかたのことはわかってもらえますから」
それもあまり気取ったもてなし料理ではなく、普段の食事に近いお総菜中心だとのこと。 なるほどなと思った。食事を見ると、その人がどういうことを大事にしているか、どんなことに喜びを感じているか、ひいてはどんな人柄かまででわかることがある。そのうえ自宅ならば、インテリアや家族との関わり方から、多くのことが伝わる。
「気どった外食では、案外わからないことが多いんですよ」と、彼は笑った。若いながらも会社を経営する身ゆえか、言葉に実感がこもっていた。
私にも仕事で知り合った気の合う友人がいるが、彼女の独身時代の家、結婚後の家、中古住宅を買って改装して住んでいる今の家を見てきて思うのは、住まいは、その人以上に人柄や思考を語るなあということだ。
一緒に仕事をしただけではわからないその人の深いところがみえてくる。
先日、リフォームが完成した彼女の家を訪ねたが、それはそれは彼女らしい個性的な家だった。壁には北欧のデッドストックの壁紙を部屋ごとに変えて、自分達で貼った。照明は、ひとつひとつ、いろんな国や地域で買ったこだわりのもの。間仕切りに古い建具やガラスがはめ込まれているが、「いつか家を建てたら使おうと、買い集めていたもの」だそう。
かつて一緒に仕事でフランスに行ったとき、うんうん言いながら先のとがったかさばるアンティークの壁時計を買っていた。仕事の機材もあるのに、そんな重いものを買ってどうするのと、みんなにからかわれていたがおかまいなしだった。そのときの時計が、リビングの一番いいところにとりつけられていた。もう何十年も前からその壁にあったかのように、しっくりとなじんで。
新しい家具や雑貨にほとんど興味を示さない彼女の理由がやっとわかった。70年代ふうの、こういう明るくモダンで和める空間が好きだったのだ。
システムキッチンも夫婦で2日かけて組み立てたという。キッチンの収納や照明は、料理好きの彼がディレクション。壁の漆喰もD.I.Y.。経費節減のためが一番だろうが、自分の住まいをすべて人任せにしない、暮らしに手間暇掛けることをいとわず、むしろわいわい言いながら楽しんでしまうところがいい。
小さいながらもすみずみまでせいいっぱい「自分らしさ」がつまった住まい。前夜に彼が漬けたいろんな種類の野菜の浅漬け。住まいや食のかたちをみて、さらに親しみが増したのはいうまでもない。明るくてあけっぴろげの、あまりにも彼女らしい空間だったので、私はいつまでも長居したくなるのであった。

長野県生まれ。女性誌や文芸誌、新聞等に、インテリア、独自のライフスタイルを持つ人物ルポを中心に執筆。夫、12歳、8歳の4人家族。
著書に、『見えなくても、きこえなくても。〜光と音をもたない妻と育んだ絆』(主婦と生活社)、『ジャンク・スタイル』(平凡社)、『世界でたったひとつのわが家』(講談社)『自分たちでマンションを建ててみた。〜下北沢コーポラティブハウス物語〜』(河出書房新社)、『かみさま』(ポプラ社)など。【編集または文の一部を担当したもの】『白洲正子の旅』『藤城清治の世界』『昔きものを買いに行く』(以上「別冊太陽」)、『lovehome』『loving children』(主婦と生活社)、『ラ・ヴァ・パピヨン』(講談社)。最新刊は、『センス・オブ・ジャンク・スタイル』『スピリッツ・オブ・ジャンク・スチル』『ジャンク・スタイル・キッチン』(風土社)の3部作。
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