2008年5月26日
元床の間です。
しばしば、来客に聞かれることがある。
「このピンク色の缶には、何が入っているのですか?」
元は床の間だったところに、米軍払い下げ家具のキャビネットを設置。その上の一番目立つところに3つも置いてあるので、よほど大事なものが入っていると思うのだろう。
私はえへへと笑いながら答える。
「確定申告用のレシートですよ」
客は一様に、なあんだという顔になる。
正確には、レシート入れ、はがき入れ、充電器入れだ。
一番目立つところに置いたのにはわけがある。この3つはほぼ毎日、1回は出し入れするものなので、すぐに手の届くところに収納場所が欲しい。だが、どれもあまり見栄えのいい物ではないので、目隠しはしたい。そんなときに、このキャニスターが大活躍なのだ。
元々は、小麦粉・砂糖・コーヒーをいれるキッチングッズで、骨董市で買ったときは、店主が「フランスの1950年代もの」と説明していた。缶なので湿気らないし、遮光されるので、感熱紙のレシートも1年間、色あせずに保存できる。当時の持ち主が見たら、台所道具に事務用品を入れるなんて! と怒るかもしれないが、古道具は使い手次第。きまりなどない。自分流に自由に楽しむべし。
こうしてみると、私は、1台2役のものが基本的に好きで、飾れてしまえる・テーブルにも椅子にもなる・ごみ箱だが蓋をすると踏み台になる、的なものばかり選ぶ。そうして、見た目も使い方も気に入った物はとことん長く使う。元々古道具が多いので、我が家に来るまでの命を加算すると、私の生活道具は寿命がやたらに長いことになる。
今、近所の古道具屋でねらっているのは、昔、学校給食で使われたアルミの鍋である。深いバケツ型で、持ち手がついていて、給食室から教室に運ぶときに使う配膳用のあれだ。キッチンの野菜ストッカーにしようと思っているが、もう一つの使い道が思い浮かばないので、買わずにいる。1台2役という自分のルールを厳守しなければ。そして、じつは、思いのほか高いので、売れ残って値下がりするのも密かに待っているところでもある。そう思っているうちに売れてしまったら縁がなかったということだ。古道具は使い道・価格・状態、いろんなタイミングが合わないと、自宅まで来ない。まさに縁のものである。

長野県生まれ。女性誌や文芸誌、新聞等に、インテリア、独自のライフスタイルを持つ人物ルポを中心に執筆。夫、12歳、8歳の4人家族。
著書に、『見えなくても、きこえなくても。〜光と音をもたない妻と育んだ絆』(主婦と生活社)、『ジャンク・スタイル』(平凡社)、『世界でたったひとつのわが家』(講談社)『自分たちでマンションを建ててみた。〜下北沢コーポラティブハウス物語〜』(河出書房新社)、『かみさま』(ポプラ社)など。【編集または文の一部を担当したもの】『白洲正子の旅』『藤城清治の世界』『昔きものを買いに行く』(以上「別冊太陽」)、『lovehome』『loving children』(主婦と生活社)、『ラ・ヴァ・パピヨン』(講談社)。最新刊は、『センス・オブ・ジャンク・スタイル』『スピリッツ・オブ・ジャンク・スチル』『ジャンク・スタイル・キッチン』(風土社)の3部作。
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